東京都在住の村田敏夫さん(仮名・62歳)は、1年前から階段を上るのがつらくなり、あるときとうとう階段の途中で息が苦しくなり、動けなくなってしまった。肺機能検査を受けたところ、COPDと診断された。これまで禁煙に失敗してきたが医師から「このままでは寝たきりになる」と告げられ、禁煙できた。さらにLAMA・LABA配合薬を処方され、息切れが楽に。毎日ウォーキングできるまで回復した。
LAMA・LABA配合薬はおのおのを単剤で使用するよりも症状軽減の効果が高く、増悪(悪化)の頻度を減らし、生存期間を延ばすこともわかっている。ただしLAMAは前立腺肥大症や緑内障がある人、LABAは心臓病がある人には使いにくいため、その場合はどちらか使用できる薬を単剤で使う。
配合薬は吸入操作が1回ですむため患者の負担が軽くなることもメリットだ。
COPDの患者は、気管支ぜんそくが併存している場合も少なくない。この場合は、LAMA、LABAのほかにさらに「吸入ステロイド薬(ICS)」を追加する「トリプルセラピー」という治療がおこなわれる。現在はLAMA・LABAの配合薬に吸入ステロイド薬を追加する方法とLABAと吸入ステロイド薬の配合薬にLAMAを追加する方法があるが、今後は三つの薬を組み合わせた配合薬も登場する予定だという。
COPDの薬は、正しく吸入することもポイントだ。使い方を誤ると十分な効果を得られないため、医師や看護師の前で吸入し、やり方が正しいかどうか、確認してもらうことが不可欠だ。
「COPDは進行すると薬物治療の効果が得にくく、在宅酸素療法が必要になります。階段や坂道を上ったときに今までに感じなかったような息切れがある、咳が2カ月以上続くといった症状があれば医療機関を受診し、早めに治療を開始することが大切です」(同)
COPDで問題となるのが「増悪」だ。風邪やインフルエンザなど呼吸器の感染症を機にCOPDの症状が一時的に悪化し、症状が全身におよぶ状態を指す。血液中の酸素不足により呼吸不全で生命が危険になることもある。また、COPDは糖尿病や心臓病など併存症がよく見られるが、増悪を起こすと併存症も悪化することがあり、さらに重症となる。重症化すると、息切れや咳、痰の症状が続き外出もままならない状態となり、運動能力や骨格筋の筋力低下を起こす。高齢者の場合、そのまま寝たきりになることもある。