「口呼吸はドライマウスや歯周病といった歯科のトラブルだけでなく、肺炎や心臓病など、全身のさまざまな病気の発症リスクを高めることがわかっています」 (※写真はイメージ)
「口呼吸はドライマウスや歯周病といった歯科のトラブルだけでなく、肺炎や心臓病など、全身のさまざまな病気の発症リスクを高めることがわかっています」 (※写真はイメージ)

 一生の中でもっとも回数の多い動作が「呼吸」だろう。近年、その呼吸の仕方が悪いと、心身にさまざまな問題を引き起こすことがわかってきた。あれこれ健康法を試すより、まずは呼吸法を変えることから始めてみてはどうだろうか。

 話を聞いている人が、ずっと口をぽかんと開けている──。

 呼吸による全身の問題に詳しい芝大門いまづクリニック(東京都港区)の今津嘉宏院長は最近、ある小学校で子どもたちに健康について講演したとき、こんな場面に遭遇したという。

「多くは、鼻からではなく、口で呼吸していました。こんなにいるのかと驚いたことを覚えています」

 子どもだけではなく、大人でも知らず知らずのうちに普段から“口呼吸”をしている可能性はある。まずは、次のチェックリストを見ていただきたい。

▽くちびるが乾いて、リップクリームが手放せない
▽茶渋やコーヒー、赤ワインなどで歯が着色しやすい
▽せんべいやクッキーは、茶やコーヒーなどの飲みものなしでは食べられない
▽話していると、声がかすれてくる
▽口の中がいつもネバネバしている

 一つでも当てはまった人は要注意だ。これらは口の乾燥を示すサインで、とくに「せんべいやクッキーは飲みものなしでは食べられない」というのは、“クラッカーサイン”といい、海外でも知られている指標だ。

「口呼吸はドライマウスや歯周病といった歯科のトラブルだけでなく、肺炎や心臓病など、全身のさまざまな病気の発症リスクを高めることがわかっています」

 こう口呼吸の害を訴えるのは、ドライマウス研究会代表で鶴見大学歯学部(横浜市)の斎藤一郎教授だ。

「そもそも人間は口ではなく、鼻で呼吸をするようにできています。しかし、現代人は花粉症や鼻アレルギーなど鼻呼吸を妨げる病気を持っていることが多く、また、柔らかい食べものが増えて食事中にしっかりかむという習慣も減っています。その結果、口を閉じるときに必要な表情筋も緩み、口呼吸が増えているのです」(斎藤教授)

 口呼吸のどこが問題なのか。その理由は大きく二つに分けられる。一つは口の中への影響、もう一つは全身への影響だ。

 まず、口の中の問題だが、口呼吸をすることで本来は唾液(だえき)で潤っているはずの口腔内が乾燥する。斎藤教授はこう説明する。

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