東:性虐待のことは完全に記憶が封印されていたんです。小2から拒食症になったのも不登校になったのも、思春期からずっと不調を繰り返してきたのも、そこに原因があったとわかった。
東:記憶が蘇ったとき、「自分が汚れている」という思いにとらわれて、ものすごく傷つきました。でもそれをひろこさんに話したとき開口一番、「小雪ちゃんは何も変わらない!」って言ってくれたんです。すごくうれしかった。いまの私の人生はその一言がベースになっています。
増:性虐待を受けた人には「自分は汚れている、しみがある」という感覚があるらしいんですね。でもその感覚は私にはわからない。大変だったのは理解するけど、「ん? 何にも変わらないよ?」っていう感じ。私は常に“問題解決型思考”なんです。「どうやったら解決できる?」って考える。
東:論理的なんです。だから私の問題に一緒に引きずり込まれたりしない。
増:たまに「グチを聞いてもらいたいだけなのに!」って言われてケンカになるけどね(笑)。
東:本を読んでくださった方からよく「性虐待を受けたからレズビアンになったの?」と聞かれるんですが、それは違います。性虐待を受けても異性愛の人もいますから。
増:もしかしたら相関関係はあるかもしれないけれど、因果関係ではないよね。
東:つらかったけど、自分に向き合ってよかった。大量の薬をやめられたもんね。
増:それに私たちはあの大変なときを一緒に乗り越えたから、恋人から「家族」になれたんだと思います。
※「『自分らしく生きることはプライスレス』同性カップルが伝えたいこと」へつづく
※週刊朝日 2016年12月23日号より抜粋