東:フランスに留学することが決まって、周りの友達に打ち明けたんだよね。
増:22歳のときでした。「気持ち悪いって思われるかも……」と声が震えたし、泣きながらでした。でも、みんなも一緒に泣いてくれて。そのあとフランスで初めてLGBTの仲間と出会えて目の前が「パーッ!」と開いた感じがしました。ずっと孤独で誰にも相談できなかったから。
――東さんが自分のセクシュアリティに気づいたのは高校2年生のとき。きっかけは親友の女の子だった。
東:すごく仲良しで、いつも一緒に勉強していたんです。その子が「勉強が手につかない」って泣きだして「実はいま女の子と付き合ってる」ってカミングアウトしてくれた。びっくりしたけれど、そのとき「そうか」って気づいたんです。私が親友を大切に思う気持ち、これが恋なのか!って。
増:身近に仲間がいたのはラッキーだったよね。
東:まあ気づいた時点でその子には失恋したわけですけれど(笑)。でも「世の中に私一人だ」とは思わなかった。ただ「親には絶対に言えない」とは思っていました。
――そのころ東さんはLGBTとは別の問題を抱えていた。高校卒業後に憧れだった宝塚音楽学校に入学したものの、ハードな上下関係といじめに耐えられず、精神のバランスを崩してしまったのだ。
東:05年に舞台に立てなくなって、06年に退団しました。辞めてしまうと目標を見失ってしまって……。うつを発症し、オーバードーズ(薬物過剰摂取)や自殺未遂を繰り返していました。
増:付き合いだしたころも彼女は不安定でしたよ。ものすごい量の薬を飲んでいたしね。
東:別の理由があったんだけど、そのときはわからなかったんだよね。
――11年、東さんは増原さんの勧めで専門のカウンセリングを受け、実父から性虐待を受けていた記憶を蘇らせた。14年にそのことを著作で告白している。
増:私もまったく考えもしなかったことだったので、びっくりしました。