介護を経験しつつ、仕事をステップアップする人もいる (※写真はイメージ)
介護を経験しつつ、仕事をステップアップする人もいる (※写真はイメージ)
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 介護の問題を抱えて仕事をやめる人は、年10万人にも及ぶ。安倍政権は「介護離職ゼロ」を掲げるが、険しい道筋だ。離職を防ぐとともに、やむを得ずにやめた人が再び働きやすくすることも重要になる。突然やってくる介護。仕事をやめた後、どうすればいいのか。新たな仕事探しをどう進めたらよいだろうか。

「これまでのキャリアがあればすぐに再就職できそうに思えますが、実際は厳しい。再就職に結びつけるには、『介護者だからできない』を言い訳にしないこと。転職時に誰もが行うように、自分のスキル(能力)を棚卸しし、何が自分の武器かを客観的に判断することが大事です。介護を経験しつつ、仕事をステップアップする人もいます」

 こう語るのは、ワーク&ケアバランス研究所(東京都)主宰の和氣美枝さん(45)。

 不動産会社の正社員だったが、7年ほど前に認知症の母の介護で退職した。今はその経験を生かし、企業に対して従業員の離職を防ぐ相談の受け付けなどをしている。感じるのは、転職時に年収や肩書のハードルを下げられず、チャンスをつぶす人が多いことだ。

「再就職の際、前職の肩書や年収などの待遇を比較しないこと。また、知り合いから職を紹介されても、親の年金があるうちは安心してしまうのか、チャンスを逃すケースがあります」

 再就職活動では、面接担当者から「介護休職中に何を会得しましたか」と聞かれることがある。答えに窮する人もいるが、和氣さんは「介護中でもビジネススキルを養うことはできるので、あきらめないで」という。

 例えば、介護中は主治医、ケアマネジャー、ヘルパーらと関わる。多くの人とやりとりするのはマネジメント能力、親に代わって要望を簡潔にまとめて伝えるのはプレゼン能力だ。

 電気工事業の向洋電機土木(横浜市)で、正社員として働く横澤昌典広報部長(44)は、30代前半で介護のため異業種へ転職し、前職のスキルは生かせなかった。ただ、介護経験を新職場で生かせた。

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