母は14年に他界した。ただ、「できることはやった」と振り返る。今は、自らの体験を介護者の会で語るまでになった。

 介護を機に生活や働き方を見直せた、と振り返る。離職でお金を使わない生活を経験したので、無駄遣いをしない。自宅をオフィスにして働き、パソコンやSNSを使えるように勉強。簡単な資料はワードやエクセルでつくり、パワーポイントでのプレゼンも習った。

「教室に通うとお金がかかりますが、フェイスブックで知り合った友達に教えてもらい、喫茶店代ぐらいで済んでいます」という。

 介護しながら働くことが当たり前の社会を──。

 そんな思いから、柳澤さんは今年1月、前出の和氣さんら介護離職の経験者とともに一般社団法人「介護離職防止対策促進機構」を立ち上げた。

 企業の人事担当者向けの講座を開き、介護者の実情や介護保険のしくみを伝え、離職防止に役立ててもらっている。

「介護離職の結果、手に職をつけて生涯現役で働ける道筋ができました。今がすばらしいので、定年まで働き続けた場合とどちらがよかったかも比べません。一人でも多く、働く介護者が活躍できる世の中になってほしい」。柳澤さんはそう願っている。

●介護離職後、新たな仕事を探す7つのコツ
・自らのスキル(能力)の棚卸しをして、強みや武器を探す
・転職先が自分に何を求めているのかをしっかりと考える
・肩書や年収の面で、前職と新たな仕事とを比較しない
・日ごろから、社内だけでなく社外のネットワークを築く
・多くの人と接し、コミュニケーション能力を向上させる
・パソコンやSNSに習熟し、強みにしたい資格や免許を取る
・介護中でもビジネススキルを高められるので、自信を持つ
(横澤さん、和氣さん、柳澤さんへの取材から作成)

週刊朝日 2016年11月4日号より抜粋

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