北海で再び野球に関わるようになった坪岡部長は、生徒の視点に立って接することを誓い、野球にも派手なガッツポーズをしない“サムライ”のような礼節を持ち込んだ。
「選手たちには『野球をやることがえらいわけではない』と言います。ほかの競技では、いい成績を残してもマスコミに取り上げられないことすらある。そのことを忘れずに謙虚であれと伝えています」
甲子園入りしてからも、「勘違いするな」と口にしてきた。
「ちやほやされるのは、子どもたちはうれしいと思うんです。けれど、それも過去のことと思わなくちゃいけない。舞い上がって踏み外すことだってあります。地に足をつけることが大事なんです」
1901(明治34)年創部以来、初の決勝に進んだ。
「選手たちは大きな舞台で一喜一憂することなく力を発揮してくれました」
相手を敬い、派手なガッツポーズや雄たけびで喜びを表現することもない。望外の結果を手にしてもぶれない姿勢は、決勝戦で敗れてもなお、球場の観客を魅了した。その底流には、平川監督と坪岡部長による「立派な人間であれ」という教えがある。
広陵の中井監督は言う。
「『作られた礼儀やあいさつはいらない』と考えています。テレビなどに映らないところでしっかりできているか。そういう高校が強くないといけないと思います。北海は初めて決勝に進み、壁を突き破ったと言いますか、何かをつかんだんじゃないでしょうか」
※週刊朝日 2016年9月9日号