「これで、稀勢の里は何とか綱取りの可能性を残したんじゃない」
大相撲名古屋場所14日目、白鵬と稀勢の里の直接対決。白鵬が負けた後、ベテラン相撲記者はこう語った。
場所前、稀勢の里の綱取りは優勝が条件とみられ、「ポイントは白鵬との直接対決」との声が多かった。いざ場所が始まると、最大の壁の白鵬とぶつかる前に意外な展開が続いた。
5日目、順調に白星を重ねていた稀勢の里が栃煌山に突き落としで敗れた。嫌なムードが漂ったが、白鵬と宝富士の取組も、意外な展開を見せた。
白鵬は立ち合いにまず左で張り、相手の顔が右に動いたところを右からかち上げた。何ともエグい“白鵬スマッシュ”。「あれは相撲じゃない。プロレスだ」と眉をひそめる親方もいるお得意技だ。
だが、宝富士にこらえられ、慌てたのか見事な小手投げを食らい、土俵に仰向けに転がった。
「完敗でした。(モンゴルの国民行事)ナーダムを見ていて寝不足なんだと言われてましたね(笑)。あの頃は報道陣に囲まれていても、『ナーダムを見るために早く帰るよ』とか言ったそうですから」(スポーツ紙デスク)
ナーダムは競馬、弓、モンゴル相撲の三つの競技からなる。各地で開かれ、最大規模は革命記念日の7月11日から3日間、首都ウランバートルで開かれる“イフ・ナーダム”。宝富士戦は、その直後だった。