男性も育児に関わることが多くなった今、男性の産後うつ「パタニティブルー」に悩む人が増加している。虐待にも繋がるとのことだが、どうすればそうした状態にならないよう防止できるのか。昨年から育児休暇を取っている放送作家の鈴木おさむ氏に聞いた。

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 実際に育児休業を取ってみて、父親には意外とやることがないことに気づきました。大事なのは、家庭の中で自分のポジションをどう築くかだと思います。僕の場合は、料理を全部つくっています。家庭の中で自分の柱をもつことができるし、料理に関する妻のストレスをなくすことができる。

 ただ、本気で毎日料理をつくることはめちゃくちゃ大変です。週1回旦那が料理を“手伝う”のとは全く違う。旦那がたまに料理をすると、冷蔵庫に入っているものを全部使ったり、3時間かけて料理したり。でも毎日の料理では、数日間に分けて食材を使ったり、15分で何がつくれるかを考える。

 一方で、片づけや掃除などは妻にすごいこだわりがあります。僕がやると二度手間になるので、やらないでほしいと言われました。

 家庭内でこういうコミュニケーションがとれていない夫婦は多い気がします。体の骨がぐっとつまったままずっと動いていく感じ。うちはそこを日々調整しながらできたのがよかった。

 育児に過度な負担を感じてしまうのは、夫婦で話し合っていないからだと思う。

 育児に参加するというのは、時間が少し空いたからできるものではなくて、覚悟を決めて取り組むべきもの。子どもが生まれた家庭で、自分がどういう生き方をするのが一番いいのか、奥さんと話し合わないといけない。そこでポジションづくりをしていかないと、育児に翻弄されてしまう。意外とここに時間をかけないといけません。

 男が産後うつになるのは必ず理由があると思います。 その理由が、「奥さんに責め立てられた」とか、「自分の家でのポジション」とかであるならば、なぜ奥さんがそう言うようになったのか、なんで自分が家庭内で追い詰められるようになったのか、原因を考えないといけない。

 
 それは旦那さんだけのせいでも、奥さんだけのせいでもなく、それくらい育児が大変なんです。僕もしんどいなと思うこともあるし、朝起きたくないなと思うこともある。だけど、ちゃんと話し合って家庭内での役割をしっかりと持ったり、夜は自分の時間を持つようにしてやっている。自分の中で大切にするものは大切にする。お酒が好きであれば、飲みに行くとか。

 育児休業を取るには、まだ社会の仕組みができていないと思います。だから簡単に「みんなも育休を取ったほうがよい」とは言えません。

 育休を取るのが難しいのであれば、休みの日を活用したらどうか。土曜と日曜が休みだとすると、2カ月で16日間ある。奥さんに「迷惑をかけるが、16日間育児に向き合うから、徹底的にできることを教えてくれ」とお願いする。最初は奥さんにストレスがたまるかもしれないが、最終的にはストレスを減らすことにつながると思う。

 人生は1回限り。奥さんと二人で子どもに向き合ったときに、どんな子どもになるだろうかと、楽しんでいけばいいと思います。

■パタニティブルーにならないための3カ条
1.家事は効率よく
2.家庭でのポジションをつくれ
3.妻に教えを請え

週刊朝日 2016年7月1日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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