食事をおいしく食べ 、健康に過ごすためには丈夫な歯を持っていることが大切だ。では、健康な「歯」を作るためにはどうしたらいいのか。現役歯科医がその疑問にお答えする。
Q1:毎日カルシウムをとれば歯も強くなる?
A:毎日、牛乳や乳製品、あるいは小魚などカルシウムを含む食品をたくさんとったら歯が丈夫になると思う人もいるだろうが、実際にはそうではないようだ。
「歯はカルシウムだけで構成されているわけではありません。いちばん大切なことは栄養バランスです」
と、日本歯科大学新潟病院の佐藤聡歯科医師は話す。
カルシウムやリンといったミネラルは歯の材料となるが、ほかにも重要な栄養素がある。たとえば肉や魚、卵や豆腐などのたんぱく質は、歯の基礎となる栄養素だ。緑黄色野菜や卵黄などに含まれるビタミンAは、歯のエナメル質をつくる。さらには、野菜やくだものに豊富なビタミンCは象牙質の形成に欠かせない。ビタミンDはカルシウムなどのミネラルが歯に定着するのを助けるサポート役になる。
また、野菜やキノコに多く含まれる食物繊維は、歯の表面の汚れを除去してくれる効果がある。かみ応えのあるゴボウやレンコンなどの根菜や、するめいかなどは、唾液を十分に分泌させて、
▼口の中の汚れを流す
▼酸性になった口の中を中和する
▼歯の石灰化を促す
などの点から、歯によい食べものといえる。
Q2:コーラなど炭酸飲料を飲むと歯が溶けるって本当?
A:食べものに含まれる糖からミュータンス菌によって酸が発生し、口の中が酸性に傾いた結果、歯のエナメル質が溶けていくのがむし歯の原因だ。コーラで直接、歯が溶けるわけではないが、コーラには糖分が多く含まれるので、ずいぶん前からこうした噂が流れているのだろう。
コーラ以外でも糖分の多い飲みものや食べものをたくさん口にすれば、無論、それだけむし歯リスクは高まる。甘いお菓子やジュースなどのとりすぎには注意したい。
これとは別に酸性の強い飲みものや食べものによっても、歯のエナメル質は溶けてしまう。これを「酸蝕(さんしょく)症」といい、近年、糖以外のむし歯の原因としてクローズアップされている。
歯のエナメル質はpH(ペーハー)5.5未満で溶け始める。コーラのほか、健康によさそうなイメージのある野菜ジュースや黒酢、ビール、ワインなどは、pH5.5未満のことが多い。唾液の分泌量が低下している場合や、飲んでから3時間以内に寝る場合は、水やお茶で口をすすぐとよいだろう。
とくにこうした飲みものをちびちびと飲み続けると、歯の表面のエナメル質が溶け出す脱灰(だっかい)が進むので注意が必要だ。
※週刊朝日 2015年7月3日号より抜粋