今年の東大入試の数学には難問があり、受験生を苦しめた。実は、それと同様の問題を勉強していた高校があった。中学入試の算数が日本一難しいといわれる灘(兵庫)だ。偶然だが、大学数学を見据えた「必然」でもある。トップ中高一貫校の強さがわかる「算数力」を探った。
灘中学の入試は1日目は国語、算数、理科、2日目は算数、国語。算数と国語の試験が2日連続であり、社会がないのが特徴だ。入試問題は、どのような生徒に入学してほしいかという、学校からのメッセージ。なぜ算数と国語が2回あり、社会はないのか。灘の大森秀治教頭はこう話す。
「算数と国語は2日でタイプが違う問題を出して、考える力を持った子どもに入学してほしいと思っています。中学入試の社会で、考えさせる問題を作るのは難しい。入試に社会を加えるか検討したこともありますが、社会が入ると入学してくる子どものタイプが変わってしまうため、ずっと今のスタイルです」
同校で今春卒業の高3生全員に数学を教えてきた杉山登志(とし)教諭は、中学入試の算数についてこう説明する。
「ほとんどの受験生が算数好きです。1日目は60分で12問前後を解きますが、スピードや発想力が要求されます。2日目は60分で5問。じっくりと考える問題を出し、途中式で考え方をしっかりと見ます。考える力や論理的に説明する力を持っている子どもに入学してほしいから、パターンにはまらない問題を出すようにしています。その場で一から考えさせたいのです」