パターン化されていない問題を出すため、受験生にとっては初めて見るタイプの問題が少なくない。そんな未知の問題を目にしたとき、どのように考えるのかを見たいのだという。

 今年の灘中学の入試問題から、「灘らしい問題」を杉山教諭に選んでもらった。

「比例をテーマにした問題です。あまり見たことのない設定で、見た瞬間、少し戸惑うと思います。どの部分に着目するかを自分で考えていかないといけません」(杉山教諭)

 この問題を解くのは小学6年生。入試では1日目も2日目も満点が出たという。

「タイプが異なる問題を2日間行うことによって、算数が得意な生徒が集まりますから、中1の1年間で中学数学を終え、中2から数Iに入ります」(同)

 中1の1年間で公立中学の3年分の数学の授業を終えるが、そこからはスピードを落とす。

「数I・A、数II・Bを公立高校では2年間で終えますが、中2から高1まで3年間かけて、復習しながらじっくりと進めます。高2で理系も文系も数IIIを終え、高3のときには週に6時間、発展的な内容を扱いながら、問題演習中心の授業になります」(同)

 灘では、決まったカリキュラムや進度はなく、教材や進度、教え方などは教員に任されている。各教員は生徒の理解度を見ながら、それぞれのやり方で授業を進めていく。

 今年の東大理系の数学の「第6問」は関数や微積分などが入り組んだ難問で、最難関の理III合格者でも完答できなかった人のほうが多かったという。だが、それとほぼ同じ問題を杉山教諭は高3の9月の授業で出していた。

「たまたま。偶然です」と笑うが、東大受験をした生徒たちには「ラッキーだった」と喜ばれたという。

「あの問題のような扱いは、大学で数学を学ぶと自然に出てくる基本的なものです。高校生向けの演習問題ではあまり見かけませんが、高校範囲の微積分で解くことができます。大学進学後に数学を学ぶうえで助けになるだろうと思って扱いました」(同)

(庄村敦子)

週刊朝日 2015年4月10日号より抜粋

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