「どう動かすと体のどこにどういいのか」を繰り返し研究し、実践して作り上げたきくち体操。いずれも健康に直結する動き方になっている。がんの治療に気功や太極拳を取り入れている帯津良一先生(78)は、きくち体操に注目。その創始者・菊池和子さん(80)と意気投合して語り合った。
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帯:ところで菊池さんはアンチエイジングにはあまり賛成されていないんですよね。私も自然に正直に老いと向き合ってゆくのがいいと思います。
菊:そうですよね、なんであんなに若いのがいいというのかわからないです。
帯:年を取るのが自然で、死ぬのが自然。
菊:でもきくち体操では、体は毎日毎日、動かしていれば、最後まできちんと生きられるんです。
帯:そういう意味では体は老いないということですね。
菊:そうです。年は取って老いていきますけれども体はダメにはならない。私が40代のころ、記者の人たちに、きくち体操はどういう体操ですかと聞かれて、「ころっと死ねる体操です」って答えたんです。そのころは理解してもらえなかったけれど、健康的に体を使いきらないと、ころっと死ねないですよ。寿命が来れば、きちんと使った体をありがとうございましたと置いて帰ればいいんです。
帯:そうですね。菊池さんは死についてはどう考えていらっしゃるんですか。
菊:私は死んでおしまいという感じはしていないんです。体は置いていきますけれども、魂はあちらに帰ると思います。また戻ってほかの人生をやるのかやらないのか、それはわかりませんけれども。
帯:私も死後の世界はあると思っています。遠藤周作さんがこう言っているんですよ。「70すぎたらもうひとつ大きな世界からのささやきが聞こえてきた。そのささやきに耳を澄ますのが老いというものなんだ」と。私も思い当たることがたくさんあります。凛として老いている方はなんかそういう感じがするんです。
菊:すごくいい言葉ですね。私、遠藤さん大好きです。
帯:菊池さんも凛としていらっしゃいますよ。今日、お話を聞いて、小学校で体育の時間に菊池さんみたいに教えれば、ずいぶん違うと思いました。
菊:ありがとうございます。体育の授業でボールゲームをやっている場合じゃないんですよね。それで私は子どもクラブを作りました。3歳児から体育館を雑巾がけするんです。これで手と足の力をつけると内臓の働きも元気になるということを教えて、丈夫になるためにいくよっていうと、まだ3歳児でもだーって走るんですよね。
※週刊朝日 2015年1月30日号より抜粋