男性女性を問わず、はげ・薄毛に悩む人は多い。それに呼応するように、ちまたにはさまざまな増毛法が存在する。しかし本気で改善を望むなら、皮膚科を受診して薬による治療からスタートさせることが賢明だ。
東京都在住の林昭一さん(仮名・61歳)は40歳ごろから薄毛が気になり始めた。多忙だったことや、市販の育毛剤に食指が動かなかったことから、なにもせずにいた。しかし6年前、たまたまテレビで東京メモリアルクリニック・平山の院長、佐藤明男医師が男性のはげ・薄毛(男性型脱毛症=AGA)の治療を多く手がけていることを知り、同クリニックを訪れた。
AGAはテストステロンという男性ホルモンが発症に関与する。男性のほとんどは早かれ遅かれ、AGAになる。年相応の薄毛なら納得もいくが、なかには20代、30代で薄くなる人や、10代で発症するケースもある。
テストステロンは男性的な身体の形成や生殖には不可欠なホルモンで、髪の毛を濃くする作用をもつ。しかし「5αリダクターゼII型」という酵素と結合するとジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンに変換。発毛を抑制してしまう。頭頂部やおでこの生え際にはこの酵素が多く存在するため、薄毛になりやすい。一方、側頭部や後頭部には少ないため、薄毛になりにくい。
AGAの治療は、「男性型脱毛症診療ガイドライン」でフィナステリドという内服薬が推奨されている。同クリニックでは、この薬による治療で、90%以上の患者に改善がみられているという。
フィナステリドは5αリダクターゼII型の働きを抑え、テストステロンがDHTに変換するのを抑制。薄毛の進行を止める作用がある。1日1錠内服で、重い副作用は報告されていない。まれに性欲減退がみられることもあるが、服薬を中止すれば元に戻る。
効果は通常、約3カ月であらわれ始めるが、本人に実感がわくのは約1年後。また、効果は個人差が大きく、医師も予測のつかないケースもあるという。
「使い始めて急に薄毛が進行し、それから増え始める人や、1年半使ってもあまり効果がなかったのに、その後に急激に増えてきたという人もいます。残念ながら保険適用になっていないので、患者さんとよく相談しながら、処方しています」(佐藤医師)
フィナステリドは自費診療で、1カ月8千円前後かかることが多い。髪を維持したいと思う間は飲み続ける必要がある。
林さんもフィナステリドを使うことになった。佐藤医師から十分な説明を受けていたこともあって、根気よく飲み続け、6年4カ月たった現在、頭皮がまったく見えない状態まで髪が増えた。人づきあいがよくなり、おしゃれを楽しむようになったという。今でも服薬は続けている。
※週刊朝日 2014年10月24日号より抜粋