

日中に舞った雪こそやんだが、強い北風が吹き付けた東京・新宿駅周辺。足早に帰路を急ぐ人が目立つなか、駅西口にある路地裏の居酒屋街「思い出横丁」は、寒さをしのぐかのように店に吸い込まれる人でにぎわった。
「2人、入れる?」
カウンターだけの狭い店内は、ひと目で満席とわかるが、「だめ? やっぱりだめ?」と、初老の男性2人組は暖簾をくぐりながら粘り腰。横丁は、そんなおじさんたちの「城」だ。戦後の名残が感じられるこのあたりの横丁やゴールデン街は、レトロブームと相まって、久しく人気が続いている。
江戸時代に五街道の宿場町として数多(あまた)の人が往来した新宿、千住、板橋、品川の「江戸四宿」周辺には、今も人の集う路地の文化が色濃く残る。そして、人の集まる所には、飲み屋も集まってくるものだ。
「丁」には「行き交う」という意味がある。横町ではなく横丁。寒い季節だからこそ、人の温もりを探しに行きたくなる。
※週刊朝日 2014年2月21号