糖尿病になると認知症を発症しやすいことがわかってきた。血糖値を下げるのに欠かせないインスリンの働きが弱まると、認知症の一つであるアルツハイマー病が起こるというのだ。ということは糖尿病予防は認知症予防にもつながる。われわれはそのために何をすればいいのか。

 日常生活の中でできることは何か。運動、食事の改善など、生活習慣の見直しだ。

 運動はインスリン抵抗性(インスリン抵抗性が強いとインスリンの働きが弱まる)を改善させるという報告が数多く出ている。現在、1千人以上の患者が通う糖尿病専門の高村内科クリニック(東京都福生市)の健康運動指導士、小池日登美さんは、「30~40分以上の運動を週に3回以上が目安」と話す。

「ただ、日ごろ体を動かしていない方が、いきなり30分体を動かそうとしても、つらくて続かないでしょう。まずは10分程度の運動を週に1回するなど、できる範囲内で始めてください」(小池さん)

 小池さんが勧める運動法は、「遊び歩き」だ。歩くことを運動ととらえるのではなく、楽しみながら移動する手段と考えてみる。

「観光や散策、ウインドーショッピングのように、楽しみながら歩くと苦になりません。一つだけ守ってほしいのは、1分間の歩数です。理想は1分当たり110~120歩。時計で計って感覚をつかむといいでしょう。アニメ『鉄腕アトム』のテーマ曲ぐらいのテンポで歩くと、理想の歩数になりますよ」(同)

 BMI(ボディー・マス・インデックス=体重〈kg〉÷身長〈m〉の二乗)が25以上の肥満を指摘されている人は、5%以上の減量を目指す。それだけでも効果があるそうだ。

 次に食事だが、同クリニック管理栄養士の高井尚美さんが説明する。

「食事療法はむずかしく考えると続かないので、まずは『ゆっくり』『野菜から』食べることだけ意識してもらいたいです。ゆっくり食べると食後血糖値の上昇がゆるやかになりますし、満腹中枢も刺激されて食べすぎを防ぐことができます。野菜から食べるのも同様で、野菜に含まれる食物繊維が食後血糖値の急激な上昇を抑えて、おなかをいっぱいにしてくれます」

 主食の米やパンなども全粒穀物のものに変えることでインスリン抵抗性の改善につながる。

 盲点は飲み物だ。糖質が多い清涼飲料水は控えなければならないが、意外にも「カロリーオフ」と謳っている飲料にもかなりの量の糖質が含まれている。高井さんが調べたところ、カロリーオフのスポーツドリンクやビタミンC入りドリンク500mlなどには、角砂糖にして6~8個分もの糖質が入っていた。

「カロリーオフだからと安心してたくさん飲んでしまえば、結果的に糖質過剰となります。『ゼロカロリー』と謳っているものには、糖質は含まれていません」(高井さん)

週刊朝日  2013年9月27日号