東京・狛江の強盗殺人事件などでクローズアップされた「闇バイト」の存在。その“入り口”は、SNSを通じて驚くほどカジュアルになっている。AERA 2023年2月20日号の記事を紹介する。
【写真】23歳で闇バイトを始め、のちに逮捕された男性の「獄中ノート」はこちら
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「暖かいところなので楽しめると思いますよ」
SNSで「闇バイト」を募集している人物に連絡すると、1分ほどでそんなメッセージが返ってきた。“仕事内容”は海外から日本国内へ電話をかけるというもの。滞在するホテルの宿泊費などの負担はなし。2~3カ月で300万円以上稼げるという。国名は明かさなかったが、「遊んで楽しみながら生活は安定できる」と繰り返した──。
ずるずる続ける羽目に
フィリピンから特殊詐欺に関わったとして藤田聖也(38)、今村磨人(38)、渡辺優樹(38)、小島智信(45)の4人の容疑者が9日までに逮捕された。1月に東京都狛江市の住宅で90歳の女性が殺害された強盗殺人事件など、国内で相次いだ広域強盗の指示役として関与したとみられている。
容疑者らが日本の実行役と連絡を取っていたとされるのが、「テレグラム」という通信アプリだ。ロシア発のチャットツールで、時間が経つとメッセージが消える秘匿性の高さで知られている。SNSで高額収入や海外バイトをうたいターゲットとつながった後、テレグラムに誘導する流れだ。
冒頭のやり取りは、記者が実際にテレグラムを使って闇バイトにアプローチしたもの。驚くほどあっさり、つながった。
「すぐにお金が稼げると思ってDMを送ったけど怖くなった」
そう話すのは、過去に闇バイトに応募したことのある男性(22)だ。テレグラムの向こうにいる相手から、キャッシュカードを受け取る「受け子」の説明を聞かされた。だが、身分証の写真を送るように言われて不安になり、アプリを削除した。
「違法行為ではない、などと説明してハードルを下げるのが狙いです。個人情報を取られ、ずるずる続ける羽目になる」
そう指摘するのは、特殊詐欺事件に詳しい青木知巳(ともみ)弁護士だ。法務省「犯罪白書」の検挙数(2020年)を見ると、詐欺全体での検挙数は20代以下が37.1%、うち特殊詐欺では72.1%を占める。近年、若年層が特殊詐欺の「受け子」となる事例も増えているという。