ゲーム感覚で自覚なし
青木弁護士はかつて、「かけ子」グループを率いる大学生を弁護したことがある。学生らは有名大学に在籍。電話をかける“頭脳”の役割を担っていた。
「頭脳といっても、マニュアルを読み上げるだけ。被害者と直接会うわけではないので、ほとんどゲーム感覚。悪いことをしているという自覚もない」
弁護を依頼してきた学生の親は「うちの子に限って」と受け入れられない様子だったという。だが、闇バイトの影は、どの子どもにも忍び寄ると指摘する。
「特殊詐欺は末端の受け子だけではありません。この学生のように優秀とされる大学に通っていても『使う側』になる可能性はあります」(青木弁護士)
警察庁は、SNSでの闇バイトの募集に対してツイッターで注意喚起をするが、すべてを取り締まるのは難しいのが現状だ。もし、闇バイトに手を出してしまったら、どうすればいいのか。
「個人情報を握られた場合は弁護士や警察に相談してほしい。人には言えないからと内々で対応しようとしても、相手は裏で交渉するプロ。家族だけで解決するのは困難です」(同)
すでに犯罪に加担していたとしても、回数を重ねるほど罪は重くなる。23歳で闇バイトを始め、35歳のときに特殊詐欺事件主犯として詐欺罪で逮捕された「フナイム」と名乗る男性(42)は、こう話す。
「懲役と言われてもピンとこないし、その先の人生がどうなるか想像できなかった。いかに自分が利己的だったか。後悔しかありません」
(編集部・闇バイト取材班)
※AERA 2023年2月20日号