大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 テレビの医療ドラマでは、主人公の医師が患者の病気を突き止めていくシーンがよく描かれます。原因となる病気を的中させて治療がうまくいく……という流れが多いようですが、実際の診療はどうなのでしょうか? 『心にしみる皮膚の話』の著者で、京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が、自身の経験をもとに語ります。

*   *  *
「左足に変な模様ができました」

 そう訴える年配の男性患者さんが受診しました。

 冬場になってから、左足の前面(すねの部分)に赤茶色い網目状の模様が出現してきたとのこと。

 念のため、両足を見せてもらったのですが、その網目状の模様は確かに左足にしかありません。

 なるほど。

 ある仮説がぼくの頭の中に思い浮かびました。そして、それを確かめるため、患者さんに一つの質問をしました。

「右足は寒くないんですか? 普段」

 患者さんは驚いた顔をして答えました。

「はい。右足は寒くありません。何年か前に交通事故に遭ってから、足の感覚に左右差があるんです。でも、どうしてわかったんですか? そのことはお話ししてませんよね」

「なるほど。これですべて解決しました」

 テレビドラマであれば、ここで効果音が流れる場面です。

「あなたの病気は……」

 ぼくはもったいぶって診察室を見渡します。

 患者さんは固唾(かたず)を飲んで聞き返します。

「病気は?」

 ぼくは診察室の片隅を指差し、

「電気ストーブによるやけどです」

 決まった。

「ぷっ」

 患者さんは噴き出しました。

「わが家に電気ストーブはありません」

 あららら。

 一気に自分の顔が真っ赤になるのがわかりました。

「でも、こたつがあります。ずっと左足が冷たくて、左の足しかこたつにいれてないんです」

 なんと優しい患者さんでしょう。ぼくの迷推理をフォローしてくれました。気を取り直して患者さんに説明を続けます。

「ひだこという病気です」

「ひだこ?」

「はい、やけどの一種です」

 床暖房があまり普及していない寒い地域では、冬は屋内も寒くなり、電気ストーブで足元を温める人が「ひだこ」をつくって病院に受診されます。しかし、私は都市部の病院で勤務しているため、ひだこそのものを診る機会がそれほど多くありません。

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