日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、自身も1児の母である森田麻里子医師が、「子どもの誤嚥」について「医見」します。
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1月が終わるとすぐに節分。早速、恵方巻の広告も見かけるようになりました。節分の豆まきは子どもたちにとっても楽しいイベントですが、実は事故にも注意が必要です。豆やナッツは誤嚥のリスクが高く、乳幼児にとってやや危険な食べ物でもあるのです。
そもそも誤嚥とは、どんな状態を指す言葉なのでしょうか?これは、食べ物でもそれ以外でも、誤って飲み込んでしまい、それが気道、つまり肺の方向に入っていくことを指します。よく似た言葉に「誤飲」がありますが、これは食べ物でないものを誤って食べてしまい、それが食道、つまり胃や腸に向かって入っていくことを言います。
例えば飴玉やミニトマト、お団子等の比較的大きなものをそのまま飲み込んでしまうと、喉の上の方に詰まって窒息につながることがあります。もう少し小さめのものを誤嚥した場合、窒息にはならず、ぜいぜいと呼吸が苦しくなることがあります。大人でもちょっと唾液が気管に入ると、むせて苦しくなりますよね。さらに、誤嚥直後のむせや咳込みといった症状が大人に気づかれず、そのうちにしつこい咳や発熱が出てきて、検査の結果あとから誤嚥が原因だったとわかるケースもあるのです。
誤嚥により気管や気管支に異物が入ってしまうと、基本的には全身麻酔をかけ、気管支鏡を使って取り除かなければいけません。気管・気管支異物の原因として、最も多いのはピーナッツです。例えば、小児の気管・気管支異物のケース23例をまとめた2007年の富山大学の報告では、ピーナッツが原因だったものが12例と、半数を占めていました(※1)。
ピーナッツは丸くて表面がつるつると滑りやすく、誤嚥しやすい形状です。レントゲンにも映らないので、大人が見ていないところで子どもが誤嚥してしまうと、診断が難しくなります。