「振った」と言うには若干ニュアンスが異なるが、07年オフにFA宣言した中日・福留孝介もその一人だ。
子供のころから巨人に憧れていた福留は、11月15日の初交渉で、清武英利球団代表から「福留選手の獲得は、(ドラフト1位の抽選に外れた)1995年以来の球団の悲願。もう一度巡ってきたチャンスだと思っている」と口説かれると、「ありがたいことです」とうれしさをあらわにした。
だが、不作といわれるメジャーFA市場で「松井秀喜とイチローを足して2で割ったような打者」は10球団前後が獲得に動き、相場も年俸12~13億円の3、4年契約に高騰。さすがの“金満”巨人も12月10日、「日本の基準からは法外な額に高騰し、チーム内のほかの選手との年俸体系を崩すことになってしまう」(清武代表)と獲得を断念する。最終的に福留は4年総額4800万ドル(約53億円)でカブスと契約し、現在に至るまで巨人のユニホームを着ていない。
この3人以外にも、糸井嘉男(オリックス-阪神)をはじめ、水面下の交渉で話がまとまらなかったといわれるFA選手が複数存在することを考えると、“巨人を振った男”は意外に多いかもしれない。(注)金額はいずれも推定
(文・久保田龍雄)
●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。