子どもの100人に約3~5人が当てはまるといわれるADHD(注意欠陥・多動性障害)は、社会人になって初めて障害が問題化することもあります。大人になるまで問題化しないのなら“軽症=比較的対応しやすい”と思われる人もいるかもしれませんが、千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師は本コラムで、早期発見・早期介入の重要さについて考えてみたいといいます。息子がADHDではないかと悩む母親からの相談に回答します。
【40代女性Aさんからの相談】中学生の息子についての相談です。実は息子がADHD(注意欠陥・多動性障害)なんじゃないかと思っています。以前から学校で忘れものが多かったり、提出の期限を守らなかったりしてよく注意を受けてはいたんですけど、よく言われている「全く落ち着いていられない」というようなものもないし、特に相談したりはしませんでした。でも、ここ最近は特に無くし物が多くて困っています。携帯や鍵、財布……大切なものでも、とにかく何でも無くしてしまいます。気になってADHDのことを調べていたら、やっぱりそうかなって。もしADHDであればお薬でよくなる可能性があると聞きました。ADHDという可能性はあるのでしょうか。
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お子様がADHDじゃないかとご心配されているとのこと、心がうずく思いとお察しします。同時に、忘れものや大切なものを無くしてしまうこと、学校生活での困難さなど、親御さまとして支えてこられたことを想像するだけで尊敬の念を抱きます。
ADHDについては、第1回(2019年3月23日公開)でも少し触れましたが、ケースによって受診につながる年齢は異なり、目立ってくる困難さにも多様性があります。中には、Aさんがご相談で心配されているように、多動は目立たない一方で、不注意による問題からADHDであると疑われるケースもあり可能性は否定できないと思います。
よって今回は、Aさんのご相談をもとにADHDの多様性や治療の目的に触れ、早期発見・早期介入の重要さをみなさんと考えてみたいと思います。