ADHDでは、多動や不注意のほかにも、自分の興味に向かって後先考えずに突っ走っていってしまうといった“衝動性”も特徴的な症状の一つとされています。特に、落ち着いていられないという多動性に加えて、この衝動性も目立たないようなADHDでは、不注意によるうっかりミスは頻発しても、周囲の理解や支援によって生活が破綻するまでに至らないこともあるため、発見が遅れてしまうことがあります。

 実際の診療でも、社会人になって初めて障害が問題化してしまい「どうしても周囲と同じようにできない」「ちゃんとしようと思ってもミスをして上司に怒られてしまう」というような悩みを持たれて受診される人もいらっしゃいます。もしかすると、みなさんの中には、大人になるまで問題化しないのなら“軽症=比較的対応しやすい”と思われる人もいるかもしれません。

 しかし、そのようなケースでは、小さい頃から、周囲から求められることを思うようにできず「自分はできないヤツだ」と思い込んでいたり、周りでも「あいつはやる気がない」「何回注意しても聞き入れない」という評価が固定してしまっていたりと、症状のコントロールだけでは解決に結びつかないことが多いように感じます。

 ここで、ADHDの治療についても少し触れたいと思います。みなさんは、ADHDの治療と聞いてどのようなことを考えますでしょうか。 “コンサータ”か“ストラテラ”といったお薬を思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれません。中には「最近はなんか新しいのも出たらしいね」と詳しい人もいると思います。

 確かに、これらのお薬は、ADHDの主症状である多動性や衝動性、不注意傾向などに対して有効性が期待できるものです。しかし、より本質的なのは、“何が問題の原因になっているのか”を本人が理解して、問題にならないように対処する方法を事前に学び獲得することだと思います。(スペースの問題で具体的にはご紹介できませんが、最近まとめられた特集本〔参考図書〕で分かりやすく紹介されています)

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「心理社会的治療・支援は、薬物治療に先行して行うべき」