最後に京都工芸繊維大である。

「本学では、一般入試以外の入試で英語の外部試験を活用する場合、1つの試験に限定し、約2年間のスコアを有効とし、かつ公開テストに限ることで一定の公正性と公平性を担保しております。
 しかしながら、一般選抜への英語認定試験の活用については、現時点で、複数の試験のスコアとCEFRとの対照や受験体制の面で十分な公正性と公平性が担保されていることが確認できないため、2021年度の一般選抜への活用は見送らざるをえないという結論になりました」(2019年3月22日)

 大学として「公正性と公平性」にこだわり続けた。

 以上、英語民間試験を利用しない(必須としない)7校を見てきた。これらの大学が英語民間試験を利用しない理由は、そのまま、11月1日に文科省が同試験の導入延期を発表した際の説明と重なる。

 これは先見の明があったということではない。公平性、公正性が維持できないと考えた大学からすれば、英語民間試験を利用しないのはあたりまえの判断だった。現実に、延期という事態になったことを考えれば、7校の判断は正しかったと言える。

 しかし、お上には逆らえない、にらまれたくはないという思いから、「同試験を利用しないとは言えなかった」という大学もある。これは複数の学長、大学事務局長から聞いた話である。

 大学は国がおかしな政策を進めようとしたら、もっと声を上げていいのではないか。しかし英語民間試験導入の延期決定を受けた、国立大学協会長・永田恭介筑波大学長のコメントは残念なものだった。

「国立大学協会としては、これまで受験生の経済的な公平性の担保について直接文部科学省にもお願いして参りましたし、文部科学省も改善に向けて活動されていたと承知していたところであり、残念であるとともに驚きをもって受けとめております」

 他人事で当事者性があまり感じられない。「改善」という認識があり、「残念」と受け止めている。しかし、これでは不安に思う受験生、高校の感覚とズレる一方だ。

 受験生のことをしっかり考える、何か起こりそうならば心配して対応する。そういう姿勢で国は入試制度を整備してほしいし、大学は入試を行ってほしい。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫