とはいえ、こうした生き方はホリプロの伝統からはズレている。愛人タイプよりはお嫁さんタイプを、というのがこの事務所の女性タレント選びの基本だからだ。山口百恵に榊原郁恵、山瀬まみ、向井亜紀、優香……。堀ちえみなどは3度結婚したし、和田アキ子や鈴木保奈美も2度している。最近は、平山あやが速水もこみちを射止めて話題になった。
そんななか、独身を貫いているのだから、行き遅れたさびしさなども漂わせそうなものだが、彼女の場合、それが希薄だ。結婚についても、したくて「できない」のではなく、あくまで「できる」けどしない、というイメージなのである。
こういうタイプの女性タレントは、ほかにいそうでなかなかいない。同世代はもとより、上の世代でもどうだろう。それこそ、黒柳徹子クラスの芸能力、そして使い減りしない耐性を感じるのだ。「徹子の部屋」のような番組を誰が引き継げばよいか、というテーマを考えるとき、若手なら指原莉乃あたりが面白そうだが、いちばんの適役は井森なのではなかろうか。
とりあえず、この調子なら当分、あのダンス映像を解禁して話題作りする必要もないだろう。ましてや、本人が実際に踊ってみせることなどまずなさそうで、それはいささか残念なことでもある。
というのも、最近「アンドロイドものまね」で売り出し中のアンドーひであきという芸人がいる。そのレパートリーのひとつが、井森ダンスだ。ものまね番組でそれをやっているところに、ご本人登場、本家本元の井森ダンスを披露、なんて場面をぜひ見てみたいのだが!?
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など。