長く出演した番組としては「郁恵・井森のお料理BAN!BAN!」や「クイズダービー」がある。ただ、料理もクイズも「できない」ところが面白がられていた。思えば彼女、何かがものすごく「できる」わけでもないのに、生き残ってきたのである。

 ところが現在、業界での評価はむしろ「できる」寄りだ。つい先日も「関ジャニ∞クロニクルSP」でオアシズの大久保佳代子が「かわいそうな女というポジションをとらない。人を傷つけないし、スタッフさんがしてほしい質問もちゃんとする」と、そのすごさを指摘。2年前のネットTVでは、土田晃之が「いじりやすい。大先輩だから変なこと言ってはいけないな、と思う。それなのに、何でも返してくる」と賛辞を送っていた。一見、何も「できない」ようでいて、芸能界的には何かと「できる」というのが、彼女の立ち位置であり、強味なのだ。

実は「いい女」という強み

 この「評価」には、彼女の容姿や雰囲気もプラスに働いている。アラフィフには見えない美貌や美肌、さらには「いい女」っぽさは、大久保のいう「かわいそうな女」からは遠いものだ。また、そこから来る自己肯定感が余裕につながり、土田のような男芸人のセクハラまがいのいじりにも平然としていられるのだろう。

 そんな井森はプライベートも「使い減り」していない。「スキャンダル処女」というほどではないが、交際が噂されたのは一般人ばかり。有名人との浮いた話とは無縁なのである。

 じつのところ、恋愛や結婚や出産は話題にできる反面「年をとった」というイメージにもつながり、女性タレントには両刃の剣だ。また、秋元康はかつてこんなことを言っていた。

アイドルってのは、ある部分、男ができたら終るっていう宿命があるわけでしょ」(『よい子の歌謡曲』30号)

 バラドルもまた、アイドルの変型だとすれば、彼女はまだアイドルとして終っていないということかもしれない。

 そういえば、彼女はデビュー時のキャッチコピーにも恵まれていた。

「井森美幸16歳、まだ誰のものでもありません」

 このおかげで本人が「いまだに誰のものでもありません」とギャグにし、笑いをとることもできる。あるいは、最初から何か「持ってる」人だったということだろうか。

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