その一方で、前述した「オワハラ」なども含めて、学生が混乱することを危惧しています。私たちが望みたいのは、学生が学業や課外活動などに打ち込める環境を整えること、そして自分と就活に向き合い希望の企業に入社し、イキイキ働けること。そのためには一定のルールは必要であり、その上で企業ごとの社風や戦略に基づいた採用活動を行うべきだろうと考えています。

 当社では、新卒一括採用(第二新卒含む)とキャリア(中途)採用を行っています。新卒採用がガイドラインのない通年化となれば、コスト的にも労力的にも非効率になることは間違いありません。ただし、海外に留学する日本人学生や日本の大学に留学する外国籍学生など、学生が多様化していることも事実。だから6月の一斉選考に間に合わないということであれば、チャンスを拡大することに異論はありません。それによって魅力的な“人財”(味の素では社員が最も大切なリソースであるという価値観から人材を“人財”と呼ぶ)に会えるのであれば、双方にメリットがありますよね。

■採用活動は学生の実情に配慮しながら変化

 そうした複線化・多様化が進めば、ジョブ型採用になるのは当然だと思いますね。求める人財要件を決め、その人財要件にマッチする人財を採用するスタイルになるでしょう。その一方で、私たちはキャリア採用を既に実施しているので、新卒におけるジョブ型ということなら、例えば、デジタルやR&D(研究開発)、マーケティングなどが挙げられると思います。国籍、人種などを問わず公平に採用しますので、採用時期も含めて、門戸を広げていくことは検討しています。

 一括採用は学生と企業双方に効率的という一方で、留学や教育実習などでどうしても現行の採用スケジュールに合わないケースもあります。このため、当社では既に春採用と夏採用の2タームで採用を行っています。6月に加えて、7~8月にも選考します。

 当社では「人財に関するグループポリシー」を設定しており、これは採用時期や採用方法にかかわらず順守します。ですから、今後の採用についても基本的なスタンスは変わりません。一括採用は確かに効率的ですが、学生の学び方、場所や時期も多様化しているので、そうした実情に配慮しながら、一括採用の日程やあり方が時代に合わせて緩やかに変わっていくのではないでしょうか(談)。

(文/笠木恵司)

※アエラムック『就職力で選ぶ大学2020』から抜粋