岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など
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「ワインが健康によい」という根拠にポリフェノールが含まれているからという説がある。抗酸化作用があるというチョコレートにもワインと同様にポリフェノールがたくさん入っている。(写真:Getty Images)
「ワインが健康によい」という根拠にポリフェノールが含まれているからという説がある。抗酸化作用があるというチョコレートにもワインと同様にポリフェノールがたくさん入っている。(写真:Getty Images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。

 感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。

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 ワイン造りのとき、ブドウの果皮と種子からはタンニンなどのポリフェノールがたくさん溶け出す。

 ポリフェノールには(後述するように)抗酸化作用がある。果皮と種子など固形物を残しながら発酵、醸しを行う赤ワインにはポリフェノールがたくさん含まれている。だから、赤ワインは白ワインよりも酸化しづらい。

 そのため、赤ワインは熟成に長い時間をかけることができる。どちらかというと赤ワインのほうが長熟型のワインが多いのはそのためだ。

 では、いったいタンニンとポリフェノールの関係はなにか。そもそもタンニンとはなにか。ポリフェノールとは何か。

 タンニン(tannin)とは植物由来の水溶性化合物の総称だ。フェノール性ヒドロキシ基をもつ芳香族化合物で、特別な性質をもつもの、とされている。

 ヒドロキシ基とは酸素と水素でできる(-OH)のことだ。フェノールとはベンゼン環にヒドロキシ基がついたものをいう。Pasted Graphic.pdf ¬タンニンの由来は「革を鞣す」という英単語、tanから来ており、もともとはなめし皮っぽい物質のことを指していた。

 要するに、タンニンはいろいろな物質の総称であるために「これがタンニン」という物質はないのだ。

■タンニンの性質は、味覚の一つ「渋み」

 さて、ポリフェノール(polyphenol)とは文字通り「たくさんの(poly)」フェノールのことだ。分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ、その植物成分の総称だ。

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ポリフェノールと渋みの関係