学生生活の面で異なることの一つとして、日本の大学における「体育会(部活)」の存在があります。日本の一部の学生にとって部活動が学生生活の多くの時間を占める場合があります。私は京都大学に留学に来たとき、サッカー部に入りたいと思いました。でも、毎日の練習が4時間で試合なども含めると週6日は拘束されると聞いて、先輩に「いつ勉強する時間があるのですか」と思わず聞いてしまいました。

 イスラエルでは原則、部活動はありません。ただし、政治的なサークルに参加している学生はいます。政治家との面談や他のグループとの政治議論、ときにはデモ活動もするサークルです。

 学費に関しては、イスラエルにある7つの総合大学すべてが国立であり、年間の学費は日本円に換算して約35万円で文系理系問わず一律です。アルバイトをする学生は日本ほど多くはいません。ただし、奨学金制度が充実していて、奨学金を受ける代わりに高校生に勉強を教えることが義務付けられたりしています。

 日本の大学には「ゼミ」というイスラエルにはない一つの特徴があります。学部学生が指導教官の下に集まり、集中的にゼミをやり、しばしば居酒屋で談論風発の「課外授業」もあります。私が京大時代に参加していたのは、白石隆教授(国際政治学、現在アジア研究所所長)のゼミです。慣れるまでは大変でしたが、ゼミは私の研究の助けになりました。

 イスラエルの大学で私が日本で経験したゼミのスタイルを試みたことがあります。講義のあと学生をレストランに誘ったところ、彼らは大変驚き喜んでいました。イスラエルでは教授と学生が学外で食事をすることはほとんどありません。

 さて、冒頭のリクルート社の面接結果はうまくいきました。何人かの学生は採用されて日本で働くことになったのです。同社によると、「日本国内で留学生を中心とした学生を探すのは容易ではない。日本の文化や言語を理解する優秀な学生は海外の大学で採用すべき時代である」とのことです。私も賛成です。大学のグローバル化で私たちはお互いに学ぶべきであると思います。日本だけでなく、イスラエルも同じです。

○Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年エルサレム・ヘブライ大にて政治学および東アジア地域学を修了。07年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に送られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。12年エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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