毎日毎日、何かを発見して目を輝かせるチビを見ていると、この世界がなんだか素敵な場所に思えて来る。
だからって、私は石を拾って「石!」とテンションが上がることはもう絶対にないけれども。
でも、もし、冷蔵庫の製氷機の引き出しを開けて、氷の代わりに石が詰まっていたら、「石!!」となるし、オペ中に「メス」と手を出して石を渡されたら、「石!!」となるし、
「ほら、あれなんだっけ、ほら、叩いて渡る……えっと何橋だっけ、なに橋を叩いて渡るんだっけ……?」
「石!!」
こうして考えてみると大人になっても「石!」とテンションが上がる場面はけっこうある。
あるが、状況が複雑になっていくのかもしれない。
今のチビの反応が基本編。大人になったら応用編。
シンプルに石を拾って「いち!」
虫を見つけて「むち!」
誰もがここからスタートするのだ。基礎があってこその応用編だ。
「海!」「夕焼け!」「満月!」
大人になっても基本のまま使える単語もある。
これらはいくつになっても感動するほど素敵なのだ。
「ハンバーグ!」「ちゅるちゅる(うどん)!」「りんごじゅーちゅ!」
食べ物へのテンションは基本変わらないだろうが、ちびのように「やったーーー!」と全身で喜びを表現することはもうない。
子供の食いしん坊は可愛いが、大人は食いしん坊に見られるのがちょっと恥ずかしいんだから。黄レンジャーならいいけど。私なんてもう、少食に見られたくて仕方がないんだから。
それにもう、大人になるとうどんやおにぎりくらいで、「やったー!」とはならないのだ。私が今一番テンション上がるのは生ビールだ。
毎日喜怒哀楽が全身から溢れんばかりにほとばしるチビ。
「かーちーて」と何でも欲しがり、もらえないと「わーーん!」と泣いて床に突っぷす。
「みててー! みててー!」と気を引いて、特に何もしない。
パパを見つけて「きゃーーー!」と奇声を上げて駆け寄る。
これが人間の感情の基本形かあ、1ミリもはばからず、感情を解放している姿なのだなあ、と思う。