

感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。
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■だし
次に「だし」の話をする。昆布だしの主成分はグルタミン酸ナトリウム(「味の素」などで有名)、鰹節がイノシン酸ナトリウム、で、シイタケだしがグアニル酸ナトリウムだ。
鰹節については、スリランカに似たようなだしがあると『美味しんぼ』で読んだことがある(モルディブ・フィッシュ)。キノコのだしは中国とかでよく使うし、イタリアのポルチーニもそうだ(おいしい!)。
フレンチで使う「フォン」も動物だしの一種といえよう。仔牛のスネなどを煮込んで作ったものだ。そういえば、ラーメンのだしは魚介類、豚肉、鶏肉、野菜、キノコなどとても多彩ですね。
いずれにしても、昆布のような海草からだしをとるのは、かなり日本特有なものではなかろうか。昆布だしこそが和食に一種の独自性を与えているようにぼくは思う。
■「甘、辛、塩、苦」の四味+「うまみ」という第5の味覚
もともと味覚は「甘、辛、塩、苦」の四味しかないと考えられていた。しかし、ここに「うまみ」という第5の味覚が認識されるようになる。旧東京帝国大学教授の池田菊苗(1864-1936)がグルタミン酸ナトリウムが昆布だしの本体であると発見し、その味を「うまみ」と名付けたためだ。
これをうまみ調味料として使ったのが、前述の「味の素」だ。
うまみには大別すると2種類あり、アミノ酸系と核酸系がある。アミノ酸はタンパク質の原料で、核酸は遺伝子(DNAやRNA)の原料だ。昆布だしのグルタミン酸はアミノ酸であり、イノシン酸やグアニル酸は核酸だ。
日本で発見された「うまみ」は外国料理にも存在する(ただしそのようには認識されていなかった)。例えば、アメリカ大陸で発見され、イタリアンやメキシカンなど世界中で使われているトマトにはグルタミン酸が豊富に含まれている。現在では、英語でうまみをUMAMIと表現するそうだ。