4月17日にリリースされるスガシカオの新作のタイトルが長い。『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』は、3年ぶり、11枚目のアルバムになる。
「今、音楽を聴く環境が急速に変わっています。CDよりも配信が主流になりつつある。パソコンやスマホの画面には次々とソングリストやアルバムリストが上がってくるでしょ。その中で視覚的にインパクトを残したくて、この長いタイトルにしました。自信作なので、スルーしないで聴いてくれ! という思いを込めています」
全10曲。ファンクあり、バラードあり、ジャズテイストのギターで歌うナンバーあり。曲調はさまざまだが、どの曲の歌詞もだれにでも思い当たるようなありふれた暮らしのなかのシーンが切り取られている。歌の中で特にドラマティックな出来事は起こらない。ハプニングもない。でも、かすかに切なさやはかなさがにじむ。
「このアルバムは苦しみ抜いてつくりました。3年前のアルバム『THE LAST』が、僕にとって最高傑作だったんですよ。僕の“最高傑作の定義”は自分にしか絶対に生み出せない音と言葉でつくられていること。前作は自分のキャリアでもっとも過激で、凶暴で、スキャンダラスな作品でした。プロデューサーの小林武史さんの“このアルバムにJ-POPはいらない”という言葉にも背中を押されて、青春の匂いのするような曲は徹底的に排除しています。
『THE LAST』をつくって、僕の中は一度空っぽになってしまいました。そんなゼロの状態でつくり始めたのが今度のアルバムです。曲を書いて、この曲、前作を超えられているかな? と自分に問いかけると、どうも自信が持てない。そして、最初からつくり直す。また曲を書いて、やっぱり自信が持たなくて、またつくり直す日々でした」
こうした状況が半年近く続いた2018年の夏のある日、ふと思った。
「前作を超えようとするのはやめよう。仕事帰りの電車でイヤフォンで聴いたリスナーが、音楽の中で自分が主人公になれるような曲をつくろう」