巨人がFAで獲得した丸佳浩の人的補償で、長野久義が広島に移籍したことは大きな衝撃として球界を揺るがせた。近年は古傷の左ひざの状態が万全でなく、不本意なシーズンが続いていた。昨年は打率.290だったが、春先の打撃不振が響き116試合出場で規定打席に到達できず。外野陣はゲレーロ、陽岱鋼(よう だいかん)、亀井義行のほか重信慎之介、松原聖弥と伸び盛りの若手もいる中で絶対的なレギュラーではなくなっていた。巨人フロント陣が広島は若手の選手を獲得すると推察して、長野をプロテクト枠から外した側面もあっただろう。
だが、他球団の長野の評価は高い。セリーグのあるスコアラーは「ゲレーロ、陽岱綱より長野が6番にいる方がはるかに嫌ですね。ウチだけじゃなく他の球団も同じ考えだと思いますよ。近年は春先の調子が悪いことを指摘されていますが、勝負どころの8月以降はきっちり調子を上げて高打率を残している。クラッチヒッターとして厄介な存在です。長野がいなくなって巨人は打線の破壊力が半減すると思います」と分析する。
確かに丸を補強して打線に軸ができたのは大きい。坂本勇人、丸が上位打線でチャンスメーカーになり、4番に昨季309、33本塁打、100打点と大ブレークした岡本和真が座る。だが5番以降は不安が残る。新外国人のビヤヌエバは期待値が高いが、日本の野球に順応できるかは実戦で打席を重ねないと判断が難しい。17年に35本塁打でタイトルを獲得したゲレーロも移籍1年目の昨季は82試合出場で打率.244、15本塁打と結果を残せず。陽岱鋼も87試合出場で打率.245、10本塁打と精彩を欠き、夏場以降はベンチを温める機会が多かった。一方、長野は昨季6番で先発出場した際は打率.337、9本塁打。得点圏打率.412と勝負強い打撃は際立っていた。
前述したスコアラーは、長野が加入した広島への警戒心を口にする。
「丸は抜けましたが戦力はズバ抜けています。田中広輔、菊池涼介、鈴木誠也、会沢翼が核にいて、脇を固める選手も松山竜平、バティスタ、野間峻祥、西川龍馬、安部友裕と長打や機動力の使えるメンバーがそろっている。ここで長野が入ると上位から下位まで息の抜けない打線になる。リーグ3連覇した昨年以上に手強い相手になると思います」。
巨人打線の中核を担う丸と同様に、広島も長野の活躍がペナントレースの命運を握るかもしれない。(今中洋介)