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時代劇の製作本数が減少傾向の中、2019年のNHK正月時代劇は2夜連続で江戸の町づくりを描くという壮大なスケールの作品と発表された。仕掛けるのは『篤姫』『あさが来た』を生み出した名プロデューサー、佐野元彦氏。『真田太平記vol.15』(週刊朝日増刊)で、見どころ、作品の狙いなどについて話を伺った。
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――佐野さんは『篤姫』の堺雅人さん、『あさが来た』のディーン・フジオカさんなど、ドラマの中で俳優の魅力を引き出すのがうまい方という印象ですが、今回のドラマの配役の狙いについて教えてください。
まず市村正親さんの徳川家康ですよね。
そもそも、意外に市村正親さんがそんなに時代劇やってないんです。ヘンリー五世とかマクベスとか西洋の歴史劇はやってますけど、ちょんまげを被る時代劇ってそんなに数多くないんですよ。
だから視聴者の皆さんも新鮮だと思いますし、市村さんご自身もすごい新鮮に演じていただけました。
これには狙いがあって、兎角、三英傑のなかでも信長秀吉に比べて古狸とか、あまりドラマではポジティブに描かれないことの多い家康が今回はすごくポジティブに、新しい家康、現代人の感覚で好きになってもらえるように描いたドラマなんですね。
これは原作自体がそうで、家康が江戸を一代で築きはじめたと。その時に家康は偉大なプランナーであったとともに、素晴らしいドリーマーであった、つまり、世の中を引っ張っていく人、あるいは町を作り上げていくようなリーダーっていうのは優れた計画を持つ人であって、大きな夢を描ける人であるっていうのが原作の門井慶喜先生の新しい切り口で見た家康像なんです。
そういう家康だからこそ、各部門を任された職人たちがその後の半生を心置きなく仕事に打ち込むことができたっていうのが門井先生の原作で、読んだ時、新しい家康像だ!って。そしたら今まで大河を中心にいっぱい家康を演じきてくれた方々と違う、どちらかというと皆さんのイメージではミュージカルのスターっていうイメージが強い市村さんにやってもらって、新しい家康像を作りたい、というのが今回の一番の狙いです。