日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「風疹」と「ワクチン」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
* * *
首都圏を中心とした風疹の流行を受け、11月末、厚生労働省は風疹の抗体検査の費用を今年度中にも全額負担する方針を示しました。さらに、流行の中心である30代から50代男性の風疹の予防接種の原則無料化の検討を開始するといいます。
流行の兆しをみせ始めた9月時点でのコラムでもお伝えしましたが、風疹は、妊婦さんが感染するとお腹の中の赤ちゃんも感染します。すると、先天性風疹症候群と呼ばれる難聴や心疾患、白内障や精神・身体の発達の遅れなどの症状を伴って生まれる恐れがあるのです。唯一の予防策は風疹ワクチンの接種。妊娠中は予防接種をすることができないため、妊娠する前にワクチンを打つこと、そして女性だけでなく男性も接種し、社会全体で流行を防ぐことが不可欠です。
■予防法の王道は…
しかし、妊娠中に感染する可能性があるのは、風疹だけではありません。風邪にもなります。インフルエンザになってしまう可能性もあります。
風邪程度なら、お腹の中の赤ちゃんに影響が及ぶことはありません。しかしながら、感染症の中には、胎盤を通じて胎児に感染してしまい、流産や早産、胎児に奇形や病気を引き起こしてしまうものがあるのです。つまり、風疹ワクチンを接種するだけでは不十分ということ。風疹の流行を防ぐだけでは不十分であるということ、なのです。
これらの感染症の予防法の王道は「予防接種をすること」です。妊娠中に接種できるワクチンと接種できないワクチンがあれば、そもそもワクチンがないものもあります。
ワクチンがない感染症は、手洗いうがいなどによって体内に入れないようにするしかないですが、ワクチンがある感染症は、予防接種により予防できるということです。