もう一方は、金時山への登山道に立つ社で、神奈川県の箱根町に位置する。2社の位置関係は、ちょうど足柄峠を挟んで南北に配された感じだ。どちらの神社でも春に子どもたちの奉納相撲が行われ、大きな“まさかり”が飾られている。
●五百羅漢と紅葉のコラボ
金時神社のご利益は祭神にちなみ、こどもの健康が一番だが、場所がら登山の安全祈願に訪れる人々も多い。特に箱根町の金時神社は登山口にもあたるため、登下山の折に立ち寄る姿も見られる。また、紅葉シーズンを迎える箱根には、みどころも多いために一気に人出が増える。
箱根の金時神社から数百メートルのところに位置する「長安寺」は、五百羅漢が鎮座する曹洞宗のお寺だが、境内に点在する石仏と紅葉が織りなす景色が美しい。参道入り口に広がるイチョウの黄色に導かれて足を進めると、山門にかかる赤いもみじが出迎えてくれる。
●箱根一帯が朱に染まる
このまま芦ノ湖のほうへ下っていけば、仙石原のすすき草原や富士山を背景にした湖畔の紅葉も楽しめる。また、大涌谷へ向かうロープウエーからの景色も見頃を迎えた。湯本付近はこれからが本格的な紅葉シーズンとなりそうだが、強羅の温泉街はすでにもみじ狩りの人たちで、道路は渋滞気味になっている。
調べてみたら、東京都心から「金時神社」まで乗り換えなしのバス1本でも行けるようである。箱根は泊まりでも、日帰りの旅行でももみじ狩りが楽しめるオススメスポットなのだ。
ちなみに、金時豆の名前の由来は、赤い肌をしていた金太郎から来ている。朱色は魔除けの色ともいわれていて、ある意味パワーの象徴でもある。厳しい季節の到来の前に、もみじ狩りという“赤”を愛でる風習は、ひとつの禍(わざわい)除けだったのかもしれない。これに赤い金太郎を加えるのは、まさに“まさかり担いだ金太郎”ほどの力になるだろう。近年の研究では、坂田金時の実在を否定する向きもあるようだが、おとぎ話はそのままにしておきたいと思う。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)