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これからの季節、関東で最も人気のある紅葉の名所は、神宮外苑のいちょう並木のようだ。たしかに200メートルはあるだろう直線道路が黄色に色づいている景色はみごとで圧巻である。当然、この時期の人出もハンパではない。古来、日本では「もみじ狩り」と呼ばれる紅葉見物は、春の桜見と並んで人気で共に長い歴史を持つ風習ゆえだろう。
そこで、東京から若干離れ、興味深い社伝を持つ寺社なども合わせていながら、あまりマスコミに取り上げられない紅葉スポットをご紹介してみたいと思う。少しは混雑から逃れた「もみじ狩り」を楽しんでいただけたら幸いである。
●金太郎の生誕地・足柄山
最近CMでも、ゲームキャラとしても注目を浴びている昔話の主人公を祭る神社が、箱根にある。三太郎のひとり、金ちゃんこと金太郎だ。「♪まさかり担いだ金太郎~」の続きが歌える人が少ないように、三太郎の中でもひときわ地味な存在だが、経歴としては3人の中で一番しっかりしているといえよう。金太郎伝説は、各地にいくつか残っているが、今回はもみじ狩りとあわせて静岡県と神奈川県にまたがる足柄山に伝わる物語を追ってみよう。
●金太郎はやがて宮仕えの身に
平安時代中期に源頼光という、のちの時代にさまざまな物語集に登場する武将がいる。彼はあやかしの類を退治・討伐する話の主人公として歌舞伎や浄瑠璃にも取り上げられるのだが、頼光の部下に“頼光四天王”と呼ばれる手練れの者たちがいた。京都の一条戻橋で鬼の腕を斬り落としたことで知られる渡辺綱を含むその4人衆の中に、金太郎がいるのである。足柄山で頼光と綱は金太郎と出会い、坂田金時として仲間に迎え入れたと言われている。
●足柄山にある2つの金時神社
金太郎を祭る「金時神社」は実は2社ある。
ひとつは、金太郎が生まれ育った家の跡地に建つ静岡県駿東郡小山町のお社で、こちらの近隣には、金太郎の産湯との伝説を持つちょろり七滝や頼光と出会ったと伝わる不動の滝、坂田家の菩提(ぼだい)寺・勝福寺などゆかりのスポットが点在する。