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 画像加工でもメイクでも、人はなぜ目を大きく見せようとするのでしょうか?社会において顔はどのようにみられているのか。自分の顔を使いこなすために知っておきたい顔の秘密を心理学的視点で解説した『損する顔 得する顔』(朝日新聞出版)を上梓した山口真美・中央大学教授が、目が発する魅力と、目を演出するときに注意すべき点を紹介します。

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 プリクラに代表されるプリントシール機で撮影した写真で加工が集中するのは目です。目は人の注目をひきつける性質があります。人がどれくらい目に敏感かは、遠くにいる人に見つめられている視線を察知できることに示されます。なんとなく当たり前のように思ってしまいますが、その精度は異常に高く、自身の視力では見えない程度の細かい精度まで、こちらを見ている目(学術的にいうと、白目における黒目の位置の検出精度となります)に気づくことができるのです。

 それが「目」であることが大切かを試した実験では、楕円形の目を模した画像は、白目の中の黒目の位置判断の精度は高いのに、白目と黒目の形を四角形にして“目らしさ”を減らすと精度が下がることが実証されているのです。動物のまん丸の目と比べ、人間の楕円形の目は視線の方向を示すために重要なのです。

 視線の不思議の一つに、カメラ目線のポスターや肖像画は、離れた位置から見るとどこに立っても、視線が合うことがあります。まるで肖像画の視線に追いかけられるようにすら感じさせられます。これは錯視のようなもので、3次元でできている顔が2次元平面に描かれると、視線は一点に定まらないために起きるのです。意外な錯視が生じることによって、顔は本来3次元であることを再認識させられるのです。

 この錯視は、視線ならではの独特の感覚を、改めて認識させてくれます。人は目には敏感で、視線が合うとドッキリする実感があるからで、目が合うことには独特の意味があるのです。視線恐怖などの症状があるように視線は感情に直結し、見ている側の感情を喚起するのです。特に過去の人物を表した肖像画であればよけいに、視線が合い続けることにヒヤッとする感覚が生じることもあるのでしょう。

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瞳孔の大きさで魅力が変わる?