目にそれほど敏感なのですから、自分の目の形が気になるのは仕方のないことです。日本人女性ならば、自分のまぶたが一重なのか二重なのかを気にします。これは一重まぶたが多いアジア人の特徴で、欧米人は、一重か二重かにはあまり関心がないともいわれています。
一方で、他人が自分の目に敏感であることも、忘れてはならないことです。つまり、自分の目線と他人の目線、そのすれ違いによって人間関係上の違和感がいちばん出やすいところが、目なのです。
自分の写真を見るときや化粧をするとき、目にこだわりすぎると、顔の見方が歪んでいってしまいます。小さな鏡で目ばかり見ていると、顔を見るうえでのバランス感覚はずれていくのですが、それは脳神経が「順応」するためです。見つめすぎた自分の顔に脳神経は順応して麻痺していきます。
心理学の実験では、同じ顔をずっと見続けると、顔の見方が麻痺し、顔の基準が見続けた顔と同じ方向に歪むことがわかっています。たとえば太った顔ばかり見続けると基準は太った側に、痩せた顔ばかり見続けると基準は痩せた側へと歪むのです。この仕組みを使った、美しいハリウッドスターが醜く見えるという錯視の動画が有名です(“Shocking illusion-Pretty Celebrities turn ugly! And, Pretty Girls turn ugly”!)。
これは順応と呼ばれるもので、鏡ばかり見ている女子にも、そんな効果が生じている可能性があります。見方が歪むばかりか、細かなことばかりが目に付いて、全体で見る視点も失ってしまうことでしょう。これが化粧や美容整形にも影響を及ぼすのです。
化粧などで顔をいじりすぎて他人の目からはおかしく見えてしまう、それは自分の顔の見方の歪みによるものです。順応の効果は強いうえに、反転された鏡の像を使うと、自分の顔を他人から見たのと同じに見ることが難しいのも、見方を歪ませる原因になっています。これらを防ぐためには、なるべく大きな鏡で顔を見ることがもっとも手っ取り早い対策です。
他者目線でよい顔に作りこむためには、自分の見方を麻痺させないこと。自分の見方のずれに注意を払うことが大切なのです。自分の顔を見るときに無意識に生じるこれらのプロセスを把握していれば、自分の顔を少しは客観的に見ることができるのではないでしょうか。