そして先月はまた新しく、子どもの腸内細菌そのものを調べた研究が発表されていました。アメリカ・フィンランド・ドイツ・スウェーデンの研究者たちが、生後3カ月から3歳までの子ども903人、のべ1万2千の便サンプルを解析して、腸内細菌の種類や、どんな因子が腸内細菌の多様性を高めるのかについて調べています。すると、生後3カ月から1歳2カ月ころまでが腸内細菌が大きく発達する時期に当たり、母乳を飲んでいるかどうかや出産方法、住んでいる場所や兄弟、ペットの有無などが腸内細菌に影響していることがわかりました。
なかでも特に影響が大きいのは母乳です。母乳だけの栄養であっても、ミルクとの混合栄養であっても、母乳をあげていることで腸内のビフィズス菌が多くなります。また、これまで赤ちゃんの腸内細菌は、離乳食を始めることで変わっていくと考えられていました。しかし、腸内細菌叢の発達期が終わる変わり目は、離乳食のはじまる5~6カ月ではなく、1歳過ぎに来ます。実は、食事を始めることよりも、母乳をやめることの方が腸内細菌に大きな影響を与えるようです。
とはいえ、どんな腸内細菌叢が良いのかというのは、単純な話ではなさそうです。一般に腸内細菌の多様性があるのは良いことですが、母乳を飲んでいる子の腸内細菌はビフィズス菌が多く、最初はむしろ、ミルクだけの子より多様性が低い状態です。しかし、時間が経って母乳を飲む量が減るとともに、この関係は逆転していきます。
また、体に良い特定の菌が決まっているとも限りません。この研究では、1型糖尿病と腸内細菌の関連を調べることも大きな目的の一つでした。1型糖尿病とは、子ども時代に発症することが多い糖尿病で、膵臓の中にあるインスリンを作る細胞を自分自身の免疫が攻撃してしまうことで起こります。しかし研究の結果では、1型糖尿病に関しては特定の菌の種類が関連しているとは言えず、むしろ様々な菌の機能が関係しているのだろうと結論づけられていました。