また、社会保障のカットで1000億円程度の財源を捻出する案も検討されている。

 このように見て来ると、軽減税率は、貧困対策、弱者対策であるかのように宣伝されているが、実態は、全くそうではないことがわかる。

■政官財の利権づくりに加担する新聞の談合戦略

 これほど問題があるのに軽減税率を止めようという世論はなぜか盛り上がらない。その理由は二つある。

 まず、軽減税率は巨大利権の宝庫であることだ。何を軽減税率の対象にするかは、商品サービスの売り上げに直結する。今回は2%とその幅は小さいが、官僚や政治家は、今後消費税を15%、20%へと引き上げたいと考えている。1回引き上げるごとに、何を軽減税率の対象にするのか、軽減幅をどれくらいにするのかなどが議論され、業界からは、強力なロビーイング・陳情が繰り広げられるだろう。霞が関利権の拡大を目指す官僚は天下りの拡大に利用するし、利権のおこぼれに与りたい族議員もこれに群がってくる。だから、官僚も政治家も何とか軽減税率を入れようと必死なのだ。

 軽減税率を止めようという世論が盛り上がらないもう一つの大きな理由がある。新聞社が軽減税率大賛成、というより、「軽減税率が命綱」と考えているので、これを止める議論を報じないことだ。事実上新聞の系列下にあるテレビ局も新聞社の意向を忖度して同様の態度をとっている。

 活字文化の保護振興というもっともらしい理由で、定期購読の新聞は軽減税率の対象となる予定だ。これは、安倍政権と大手新聞の間の談合で、その代わりに、新聞は消費税増税に賛成することになっている。新聞の販売部数の落ち込みはとどまるところを知らず、このままでは、どの社も生き残りさえ厳しい。2%引き上げが致命傷になりかねないと彼らは恐れている。だから、軽減税率死守というのが新聞社の考えなのだ。政権と新聞の談合で重要な政策が決まっていると言ってもよい。

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増税の実態は「利権拡大」