それにしても、何故それほどまでに大騒ぎして、バラマキをしなければならないのか。今回は、前回の消費税増税3%に比べて上げ幅も2%と小幅だし、子育て支援などにも追加で支出することで、経済へのマイナス効果も格段に低いと政府自身が認めている。
前回は、安倍政権誕生から1年数カ月しか経っておらず、アベノミクスの効果もまだ発揮できないうちに増税してしまったので、経済がそのショックに耐えきれなかったという言い訳がなされた。一方、今回の増税実施は、前回の増税から5年半、安倍政権誕生から6年半以上経過した19年10月に予定されている。これだけ時間が経てば、アベノミクスの成果も大々的に開花していなければならない。欧州などでは消費税が増税されて経済が失速することはない。日本特有の駆け込み需要とその後の反動減という問題があると言うが、安倍総理によれば、日本経済は空前の好景気に沸いているそうだ。これが本当なら、2%の増税などそれほど大きな問題ではないはずだ。しかし、実際は、大問題になっている。
誰もが心配して、これほど大規模な対策が必要だということは、要するに、アベノミクスでは日本経済はほとんど強化されておらず、5年経っても2%の増税にすら耐えられない惨めな状況にあるということだ。アベノミクス失敗を自白しているのと同じではないか。
■中小キャッシュレス対策は天下の愚策
軽減税率の問題については、テレビなどの面白ネタとして、お茶の間に広まったので、ここで一つ一つ挙げることは避けるが、ここへ来て新たな混乱も生じている。例えば、イートインでの飲食をするなら10%、持ち帰るなら8%という線引きについて、コンビニのイートイン・スペースを閉鎖しなければならないなどということが真剣に検討されている。さらに混乱に拍車をかけそうな対策が、中小小売店向けのポイント還元策だ。
消費税がアップすれば売り上げがダウンし、経営体力のない中小企業は経営が苦しくなる。そこで、中小の小売店や飲食店などで消費者がクレジットカードやスマホ決済などで代金を払った場合、増税分2%分のポイントを国の財政支援で上乗せしようというのだ。中小企業の販売低迷を防ぎ、キャッシュレス化を進める一石二鳥の「名案」として、私の古巣である経済産業省がひねり出したらしい。