さらに、キャッシュレス未対応の店は、中小の中でも特に零細な店が多いのも心配の種だ。そういうところに、事実上キャッシュレス対応を無理強いすれば、機器の導入費用や手数料負担に耐えられず、廃業に追い込まれる中小店も出てくるだろう。私の知り合いの店では、2%のポイントのために機器の導入費用を払い、さらに売り上げの3%を手数料として取られるのなら、最初から売値を2%引き下げて売った方がましだが、それでは赤字になってしまうと悩んでいる人もいた。
問題は、これだけにとどまらない。大企業と中小企業で税率が変わると言っても、例えば、同じコンビニでも、本社直営店なら大企業だから10%、フランチャイズ店なら中小企業で8%ということが起きる。消費者にはわかりにくいし、店側と顧客とのトラブルも起きかねない。
また、2%のポイント還元策により、中小店舗の扱う食料品をキャッシュレスで買えば、実質6%で買えてしまうから、増税どころか、減税になってしまうという問題もあるし、ポイントの還元率がカード会社によって異なるのにどう対応するのかという問題もある。
■軽減税率の財源のために貧困層や高齢者が損をする
増税の一方で、軽減税率やバラマキ策で巨額の財政支出が必要となる。これではいったい、何のための増税かわからない。弱者対策というなら、軽減税率など止めて、真の弱者にピンポイントで財政支出した方がはるかに良い。これは、具体例を挙げて考えてみれば誰にでもわかることだ。
食料品の消費税を8%に据え置けば、確かに貧困層には恩恵となる。スーパーのセールで100グラム75円の鶏肉を400グラム買えば2%軽減の効果は6円。本当に生活に困っている家庭にとっては6円でも確かに大きい。一方、100グラム1500円の高級ステーキ肉400グラムを買う金持ちの家庭が受ける恩恵は120円だ。それだけ税収が減って、社会保障などに回すお金が足りなくなる。軽減税率を止めれば、貧困家庭の負担は6円増えるが、富裕層家庭の負担は120円も増える。増えた税収を貧困家庭向けに集中して、例えば生活保護や貧困高齢者対策に支出する。そうすれば、貧困家庭への支援は、単に軽減税率を入れただけの場合よりも確実に増える。