今回の調査でも、暴力行為に及ぶ中高生が前年より減るなか、小学校では2万3440 人と、前年度より3590人増えていました。報道によれば、教育委員会のなかには「ガマンできない子どもが増えたからではないか」と分析しているところもあるそうです。
では、子どもは変わったのでしょうか。ある公立の小学校教員によれば「子どもがこの数年で悪くなったと感じたことはない」と語っています。
また発達心理学者・浜田寿美男さんも子どもの変化について次のように述べています。
『たかだか50年で、子どもが生物学的変化を遂げるなんてことはあり得ません。変わったのは子どもを取りまく社会状況であり、それが子どもの抱える生きづらさとも関係しているのだと思います』(『不登校新聞』380号 (2014.2.15号) 講演録)
■保護者が知っておきたいこと
「最近の子どもは変わった」とは思いませんが、「教室内ストレス」や「認知度の高まり」など子どもを取り巻く環境は変わりつつあると感じています。
では、もしもわが子が学校を行きしぶったり、不登校になったりした場合はどうしたらいいのでしょうか。
親の方には大前提として知っていただきたいことがあります。
「不登校は親に防げるものではない」ということです。先ほど述べたように、不登校の背景として「親の育て方が悪くて不登校になった」ということはありません。また本人の「怠け」や「弱さ」ゆえに不登校になるわけでもありません。
教室のなかには常にいじめが飛び交っています。「いじめに遭わない子育て」も存在しません。不登校やいじめは「子どもの世界」で起きていることであり、先生や親など大人が容易に介入できるものではないからです。
しかし親は何もできないわけではありません。親は「子どもを守る」ことができます。
ところが、実際に子どもが不登校になると、親や先生が子どもを追い詰めてしまうケースのほうが多いのです。
子どもはいじめを受けていても「学校へ行きたくない」とは言いづらいものです。自分がなぜ行きたくないのか、それを言葉で説明するのも難しかったりします。はっきりと「行きたくない」とは言わず、その理由も語らないとき、周囲は「甘やかしてはいけない」と登校を催促し、子どもを追い詰めてしまいます。
親が不登校やいじめを防ぐことはできませんが、子どもが学校で苦しんでいるとき、親が子どもの味方になってその命を守ることができます。親が「子どもの命を守るんだ」と舵を切れば、自ずと具体的な道筋も見えてくる。子どもが不登校になった親の多くが、そう考えて動いているのです。(文/石井志昂)