育児をしていると家で自分の時間がとれないので、私は最初のころは移動時間にゆっくり考え事ができてリフレッシュになっていた。でも、片道6時間の通勤がだんだんしんどくなって、10年超えたあたりからうんざりしてきました。

――結局、京都との往復を13年続けたんですね。そして、東北大教授になられて、今度は仙台との往復になった。

 片道3~4時間程度になりました。東海道線と常磐線では車窓の景色がすごく違っていて、私は常磐線の景色が好きです。すごくのどかで、ちょっと寂しい感じもするところがいい。

――それでも、体力的に大変そうです。ずっと遠距離通勤を続けるパワーはすごいですね。振り返って、子育てはいかがでした?

 うーん、とにかく旦那さんががんばって、私は語る資格がないかな。高校は毎日お弁当がいるんですが、旦那さんが作ったんです。私は実験代表になって深夜のミーティングをするようになったので、朝6時に起きられない。家ではいろんなことができない「ダメキャラ」で、娘からもお父さんからも当てにされていないです。でも、娘は娘なりに、仕事をがんばっている私をすごく理解してくれている。

 やっぱり、苦労があったというよりも面白かったですね。子どもは自分と似ているところと似ていないところがあって、面白い。

娘とは仲良し親子だ。仕事場にもよく連れて行った=2015年10月14日、東海村のKEK東海キャンパス、市川温子さん提供
娘とは仲良し親子だ。仕事場にもよく連れて行った=2015年10月14日、東海村のKEK東海キャンパス、市川温子さん提供

――お嬢さんは理科系ですか?

 いや、文系にいっちゃいました。子どものころ、楽しそうな図鑑を一生懸命そろえて、それを楽しそうに見ていたから、理系にいってくれるかなと思っていたんですが……。何で文系なのって聞いたら、古い歴史とか文化に興味があるって言われた。「そんな食っていけそうにないものを」っていう言葉がのど元まで出かかったんですが、ぐっとこらえた。私の親の気持ちがこのときわかりました(笑)。

――実験代表はいつまで?

 たぶん、2期4年やったら交代です。代表を外れたら、自分のプロジェクトとして立ち上げている別の実験にもっと力を入れたい。ニュートリノと反ニュートリノは同じ粒子なのかっていう大問題があって、それを解くための実験です。T2Kは大きな実験プロジェクトに入っていったっていう感じがあるんですけど、こちらは自分のプロジェクトとしてがんばっています。あと、他にもやりたい研究があります。その内容は恥ずかしくてまだ言えないけれど、でもやりたくて、相変わらずウジウジ悩んでいます。

次のページ
世界ではもう半分くらいが女性