Ramen Free Birds/〒247-0005 神奈川県横浜市栄区桂町181-12/11:00~15:00、17:30~20:00、[火]11:00~15:00、水曜定休/筆者撮影
Ramen Free Birds/〒247-0005 神奈川県横浜市栄区桂町181-12/11:00~15:00、17:30~20:00、[火]11:00~15:00、水曜定休/筆者撮影

 当時からよく通っていた人気店の門を叩いたが、いきなりでは厳しいと断られ、調理師学校に1年間通う。その後、30歳で改めて入社。仕込みや食材の下処理からスタートしたが、入社して3年間はラーメン作りを教えてもらえなかった。

 2000年にオープンした支店に移り、ようやくラーメン作りが始まる。店の人気に火が点き、本店では一日200食だった売り上げが1000食と5倍に。だが、支店の従業員の中で経験者は店主と宮本さんの二人だけで、他は未経験の社員とアルバイト。ラーメン作りだけではなく、社員やアルバイトの教育まですべて任された。

「ちょうどラーメンブームが来た頃で、お客さんは増える一方。今いる人を何とか一人前にしなければという状態でした」(宮本さん)

Ramen Free Birds店主の宮本智さん。20年の修業を経て作るラーメンには信念がある(筆者撮影)
Ramen Free Birds店主の宮本智さん。20年の修業を経て作るラーメンには信念がある(筆者撮影)

 店の人気はうなぎのぼり。それとともに忙しくなり、宮本さんは自分の惚れ込んだラーメンを一人でも多くのお客さんに提供するのに必死だった。ブームの落ち着きとともに忙しさも落ち着いたが、今度は「店はこれから大丈夫だろうか」と悩むようになる。入社時は5年ほどでの独立を視野に入れていた宮本さんだが、責任感が芽生え、気づけば20年以上が経過したある日、独立を考えるようになる。

「スタッフも育っていたし、そろそろのんびりしていられないと思ったんです。それに、忙しさから抜けて、自分のラーメンを作りたい気持ちもありました」(宮本さん)

 宮本さんは独立に向けて動き始める。地元・本郷台で物件を探していると、自分が生まれた病院のすぐ近くに、錆びたトタンの一軒家を見つけた。もともとはカラオケボックスの個人店だったという。ヴィンテージものに目がなかった宮本さん。あまりにボロボロなその外観に一目惚れしてしまった。

外観からラーメン店だと気付かない人も多かったという(筆者撮影)
外観からラーメン店だと気付かない人も多かったという(筆者撮影)

「7~8年は空いていた物件だったらしく、ヴィンテージ感がたまらなくてすぐに契約してしまいました。天井貼りや内装など自分でできることは自分でやりました」(宮本さん)

 独立したら一日の中で店にいる時間が一番長くなる。自分の好きなものに囲まれていたいと、店内には趣味で集めたアメリカ雑貨を並べていった。壁にはステンシルで文字をペイントし、18年6月、「Ramen Free Birds」がオープンした。店名はアメリカのプロレスのチーム「ファビュラス・フリーバーズ」と、その入場テーマ曲でもあるレーナード・スキナードの 「Free Bird」から取った。フリー(気楽に)にラーメンを作りたいという思いも込められているという。

 無事オープンにこぎつけた「Ramen Free Birds」だが、あまりにアメリカンな外観からラーメン店だと気づかれず、3~4カ月は厳しい売り上げが続いた。

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こだわり続けた「アメリカン」