AERA 2023年6月26日号より
AERA 2023年6月26日号より

 地震動予測地図で確率が低い場所だから安心とも言えない。日本海中部地震(1983年)、福岡県西方沖の地震(2005年)、能登半島地震(2007年)などは、比較的確率の低い場所で大きな被害を生じさせている。

 今後もずっと地震は続く。出来ることで備えておくしかない。

 耐震基準は1981年に強化され、阪神・淡路大震災後、木造住宅では壁の配置や柱と基礎をつなぐ金具の取り付け方などについて2000年にさらに強化された。その効果は本地震でくっきり表れている。1981年以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅の倒壊・崩壊が28.2%だったのに対し、2000年以降の建物では2.2%しかなかったのだ。

 家具の固定も重要だ。近年の地震による負傷者の30~50%は、家具類の転倒・落下・移動が原因になっている。正しい方法で固定すれば、首都直下地震の場合、家具などの下敷きで死ぬ人は239人が44人に、重傷者数は1362人が255人に減ると東京都は推計している。

 突っ張り棒に加え、家具の下に粘着シートやストッパーを併用するなど一手間加えることで効果はさらに増す。東京都は「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」をネットで紹介している。

 地震の数の変化に気を揉むより、突っ張り棒の緩みを点検することから始めたい。(ジャーナリスト・添田孝史)

AERA 2023年6月26日号より抜粋