AERA 2023年6月26日号より
AERA 2023年6月26日号より

 ここ数カ月、震度5弱以上の地震が立て続けに観測され、大地震発生への緊張感が高まっている。「次」の大地震がいよいよ来るのか。手がかりとなるのは、地震調査研究推進本部が公表する「全国地震動予測地図」だ。今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見襲われる確率を濃淡で示しているが、プレート境界に近い太平洋側の確率が高いことがわかった。私たちにいまできることは。AERA 2023年6月26日号の記事を紹介する。

【今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率はこちら】

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 駿河湾から九州にかけての太平洋側の地図を色濃くしている原因は、南海トラフ地震だ。14世紀以降は90年から150年間隔で発生しており、前回の東南海地震(M7.9、1944年)、南海地震(M8.0、1946年)から約80年たつので警戒されている。東日本大震災のようにいくつかの領域が一度に動く最大規模M9級が発生すると、死者は32万人を超え、経済被害も220兆円を超えると想定されている。ただしM9級は、M8級の南海トラフ地震より発生確率は1桁以上低いと考えられている。

 厄介なのは、南海トラフ地震の前に、中部圏を含む西日本で内陸の地震が増えることだ。過去1千年の地震を歴史文書から分析すると、南海トラフ地震の50年前から地震10年後までの期間は、それ以外に比べて約4倍、被害を起こす規模の地震が起きやすくなっている。

 金田義行・香川大学地域強靱(きょうじん)化研究センター長は「フィリピン海プレートが年に数センチずつ日本列島の下に潜り込んでいる。その80年分のひずみが、プレート境界だけでなく西日本全体でたまっている。そのため阪神・淡路大震災以降は内陸地震が活発になっていると考えられている」と説明する。

 海底にまで観測装置が張り巡らされている南海トラフではM8以上の巨大地震ならば、とても運が良ければ、事前に予兆を捕まえられるかもしれない。しかしM7程度の内陸地震は現在の地震学ではお手上げだ。

「M7程度が30年以内に70%」とされている首都直下地震も、南関東の南北東西とも約150キロにわたる範囲のどこかで起きるとしか予測されていない。

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