樹木伐採の反対活動が起きる明治神宮外苑の再開発に対し、新たな抗議行動が始まった。ラグビーの聖地、秩父宮ラグビー場の移転・建て替えに反対する署名活動だ。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

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──東京都港区の秩父宮ラグビー場を移転し、建て替える計画が進んでいます。元ラグビー日本代表の平尾剛さんは1月、「選手にも観客にもメリットの少ない『改悪』だ」と計画に反対する署名活動をオンラインで始めました。

 秩父宮ラグビー場は屋根が閉じたままになり、人工芝になる予定です。でも、ラグビーはそもそもそういう競技じゃない。青々とした芝生の上で、どんな天気にも対応できるようにプレーするのが本質ではないかと。

 ただ、全天候型で人工芝のスタジアムはフランスにあります。ですから、そのこと自体がとっぴだとは思いません。

■日本ラグビーの象徴

──何が問題ですか。

 たくさんあるラグビー場のうちの一つが全天候型・人工芝になることと、今回は意味が違うと思うのです。秩父宮ラグビー場は日本ラグビーの象徴です。「東の秩父宮、西の花園」と言われるように、ラグビー専用スタジアムは秩父宮ラグビー場と大阪府東大阪市の花園ラグビー場の二つだけです。

 秩父宮ラグビー場は臨場感がすごいんです。陸上トラックがなく、ピッチと観客席の間が近いので、プレーしていて歓声がとても近くに聞こえます。今は変わりましたが、風呂が一つだけでした。試合の後、対戦相手と一つの風呂に入ります。先人たちがラグビーの特徴であるノーサイド精神を体現したんです。

──なぜ、全天候型で人工芝にする必要があるのでしょうか。

 新ラグビー場は赤字を出せない事情があるようです。所有者の日本スポーツ振興センターは国立競技場も持っています。ただ、国立競技場の管理・運営のため、国は年間最大約10億円を負担します。だから、新ラグビー場は収益を上げるイベントを開催できるようにする必要があったと言われています。

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