他人に対する心の垣根がない。歴代のボーイフレンドの話題なども包み隠さず話す。「私は羞恥心があまりない」。あけっ広げな性格だからこそ相手も心を開き、活動の賛同者が増える/倉田貴志撮影
他人に対する心の垣根がない。歴代のボーイフレンドの話題なども包み隠さず話す。「私は羞恥心があまりない」。あけっ広げな性格だからこそ相手も心を開き、活動の賛同者が増える/倉田貴志撮影

 その一方、政府や官僚と議論していく中で、日本がいかに「シルバー民主主義」の国であるかが分かった。高齢者が国を動かし、新たな事業に対し法律は不備なまま。ベンチャー企業やスタートアップが育たない現実が突きつけられた。

 国政選挙への立候補も勧められたが、たとえ当選しても、20年間は自分の意見が反映されない政治の構図も分かった。しかし、このまま看過していたらこの国は尻すぼみになってしまう。

「テクノロジーの進化で時代がすごいスピードで進む現在、社会の仕組みは今のままではいけない」

 意を決した石山は、ミレニアル世代の官僚、弁護士、イノベーターで作るシンクタンク「PMI(Public Meets Innovation)」を18年に立ち上げた。50年後の未来を見据え、政策に関わる官僚と法律に長(た)けている弁護士が議論を重ねながら、社会の規範や制度をアップデートさせていく場だ。イノベーションやDX(デジタルトランスフォーメーション)の領域では、ベースになる法律がないことも往々にしてあったからだ。

「豊かさの前提が変わってきた今だからこそ、過去の積み重ねではなく、50年後の未来を見据えた未来逆算型の議論が必要とされている」

 石山の人間の良心を信じ切る言動は、時には「青臭い」と揶揄されることもある。また、出演番組でロシアのウクライナ侵攻の生々しい映像を見るにつけ、自分の行動が全否定された気分になりへこむこともしばしばだ。

 そんなとき、20年に事実婚をしたパートナーが住む大分県に向かう。もともとCiftの同居人だったが、大分で地方創生の事業を行うため現地に住んでいる。3歳年下のパートナーが言う。

「アンジュが大分に戻った時は、PCとスマホを取り上げ、自然の中に連れ出します」

 拡張家族もシェアリングエコノミー協会、PMIの活動も、人とつながることの大切さが基盤にある。繋がり資産が拡張家族から地域へ、それが国を動かし、国境を超えて増えていけば、世界平和がいずれ訪れると石山は信じている。人は微力だが、無力ではない。(文中敬称略)

(文・吉井妙子)

※AERA 2022年6月27日号